罪なほどにうまい…
究極のまかないが噂です

罪(つみ)のメシと書いて罪メシ(ザイメシ)。こめかみ、リップ、めがね…聞きなれない名が並ぶ「焼肉島崎苑」のお品書きの中でも異彩を放つメニューです。

誕生はオープンから2ヶ月が経った昨年9月。月に6度以上も遅刻を繰り返すスタッフの大下さんを見かねたあるスタッフが「遅刻したヤツのまかないが、まじめに働いている我々と同じなのはおかしい！」と声を荒げたことがきっかけでした。

白米の上にごま油と塩ダレをまわしかけ、仕上げにねぎの小口切りを3切れ、断面がきちんと上を向くよう、そして茶碗の中央に位置するよう慎重に、粛々と配置します。「罪を改め、身を清めよ」との思いが伝わる、極めて清貧な一杯。これで大下くんも反省し、遅刻がなくなるだろう―。

誤算は、見た目によらずうまかった、その一点に尽きます。大下さんは非常に気に入り、罪メシ食べたさにむしろ遅刻が増えてしまいました。本来みそぎ・戒めのために作られたこの一品が、罪を悔い改めさせるどころか、重ねさせてしまうことになろうとは…。くじけそうな心を抑え、そんなにうまいというならばとメニューに載せたところ、注文者は日増しに増加。大下さんの顔写真を使ったポスターも話題になり、瞬く間に知名度を上げていきました。

「小ねぎは2切れでも4切れでもダメ。3つが実にほどよく、侘しさを演出してくれるんです」と文豪・谷崎潤一郎もかくやの日本的美意識を語る島崎社長。「彼の遅刻が減らないので、また別の戒めを考えなければ」と目を細めます。新たな罪を生む一品が再び現れるのでしょうか。問い合わせは島崎苑(電話0166・68・2307)へ。