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この夏の大雨で路面の一部が陥没、通行止めになった上川管内美瑛町の道道天人峡美瑛線が、10月に全面復旧しました。11月からは、旭川駅と天人峡温泉を結ぶ無料シャトルバスの運行も始まり、大雪山国立公園の奥座敷にたたずむ道内有数の景勝地「天人峡温泉」ににぎわいが戻ってきました。約8キロメートルにわたって続く柱状節理(ちゅうじょうせつり)という地質学的にも珍しい自然環境に囲まれた秘湯で、1泊2日の温泉旅を満喫してきました。
御やど しきしま荘
116年の歴史、風光明媚な秘湯
- 昭和30年前後の天人峡温泉
天人峡温泉が、湯の郷として開湯したのは明治33年。旭川で旅館を営んでいた故・松山多米蔵翁が、アイヌの人から滝と湧泉の話を聞き、案内を受けて忠別川をさかのぼり、湧き出る温泉を発見。その3年後、松山が「天人閣」の前身にあたる「松山温泉」を開いたのが始まりです。その後一帯は大雪山国立公園の指定を受け、昭和11年に現在の「天人峡温泉」と改称しました。風光明媚な自然美を残す名泉として116年。今もなお、優良な温泉が豊かに湧き出ています。
冬道も安心、旭川から無料バス運行
今回は、季節はずれの大雪となったため、無料シャトルバスを利用して天人峡温泉へ向かうことにしました。まだ11月だというのに、真っ白に染まった山肌を眺めながら、ゆったり約1時間バスの旅。川端康成の「雪国」さながら、トンネルを抜けるとそこには、切り立った渓谷に張り付くように建つ温泉宿の灯りが見えてきました。
この日、宿泊するのは和風旅館「御やど しきしま荘」。エントランスには囲炉裏や畳などがしつらえられた和の空間が広がり、大型温泉ホテルとはまた違った趣きで、旅人を優しく迎え入れてくれます。チェックインカウンターにも一枚板で「帳場」と掲げられ、情緒あるたたずまいを演出しています。
今回の取材でとってもらった部屋は、展望ヒノキ風呂付きの特別和室。旭岳温泉と天人峡温泉の中で、部屋に露天風呂を備えるのは同宿だけ。窓の外には白銀に染まった柱状節理が広がり、爽やかなヒノキの香りが浴室と室内にも漂います。源泉掛け流しの湯の音が、最高のBGMです。
天然温泉100% 大理石と檜の湯
- 柱状節理をモチーフにした大理石造り大浴場
夕食の前に、大浴場で旅の疲れ(といっても、今回は無料シャトルバスを利用したので、冬道運転の疲れはありませんが…)を癒します。しきしま荘の大浴場は大理石造りと総ヒノキ造りの2タイプ。時間によって、男女の浴場が入れ替わるので、ぜひ両方満喫してほしいところ。気品あふれる大理石の浴場は、天人峡の柱状節理をモチーフにしており、大自然と一体となった感覚が堪能できます。総ヒノキ造りの湯は、森林の中にいるような香りに包まれ、心身ともリラックスできる癒しの空間。天然温泉100%の湯がこんこんと注ぎ続けます。
- 無料で利用できる「天女の足湯」
天人峡温泉の泉質は、中性で空気に触れると無色透明から黄金色に変色するのが特徴。湯冷めしにくく美肌効果や神経痛などに効くと昔から言われています。温泉通の間でも人気が高く、日帰り入浴や、無料の足湯を楽しむ人も多くいます。
静かに流れる時間 心安らぐ隠れ宿
ここ数年、北海道の温泉宿にはアジア系の観光客が数多く訪れていますが、この日の宿泊客は地元の敬老会やカップルがほとんどでした。天人峡温泉は、「羽衣の滝」への遊歩道が長く通行止めになっているため、海外のツアー会社はその魅力に気付いていないのかも…。近場で手軽に行ける隠れ宿といった風情は、地元民ならではの楽しみ方(特権)なのかもしれません。館内の落ち着いた雰囲気とスタッフのやわらかなおもてなしに、とても穏やかな時間を過ごすことができました。
地元食材を中心とした創作和食膳
夕食はお食事処での和食創作料理。インターネットの口コミでも評価が高く、今回の旅で楽しみにしていたポイントのひとつ。一番人気の「しきしま膳」は、地元、東川町の農産物や近郊の優れた食材を彩り豊かに仕上げた料理長自慢の逸品が並びます。素材のよさを生かしながら、ひと手間かけたものばかりで、盛り付けや器にも心が配られているのが分かります。前菜、焼物、蓋物など伝統的な和会席のスタイルをとりながら、洋皿やスイーツも取り入れ、どの一皿もメインになると言っても過言ではありません。お酒もいただきながら、じっくり時間をかけて味わいました。
悠久の時が刻んだ神秘的な景観
- 火山活動が生み出した柱状節理。絶壁の上には張り付くように原生林が茂ります
翌日早朝―。昨夜は宿に着いたのが午後4時を過ぎていたため、じっくり見ることができなかった渓谷を散歩がてら見学に。渓谷の底から見る切り立った岩肌は、圧巻の迫力。温泉街の中心を流れる忠別川が、数万年をかけて侵食した柱状節理は、神々しさをたたえています。
天人峡の冬は、風と雪と低温が作りあげた神秘の世界が広がります。柱状節理の上部の樹木は、冬になると常に吹き付ける西風の影響で、樹氷になります。そして、柱状節理の下部に目を向けると、その割れ目から湧き出た地下水が、巨大なつららとなって青白く光っています。さらに、天人峡で見られる冬の自然現象の代表といえば美しいダイヤモンドダスト。しきしま荘のスタッフに聞くと「天人峡は、朝方がおすすめです」とのこと。ピンと張り詰めた冬山の空気と清流の音に心が浄化されていきます。
部屋や食事グレードによって多彩なプラン
今回、体験したのは夕食が最高ランクの「しきしま膳プラン」。2名1室の場合、特別和室は大人1人1万7500円、和室10畳は1万1500円、和室8畳は9500円。和洋折衷の創作会席「SHIKI膳プラン」(8500円~)や、お得な「羽衣膳プラン」(7500円~)もあります。料金はすべて消費税・サ料込み、入湯税150円は別途。ただし、休前日や年末年始、人数、時期によっては価格は変動します。詳しくは同社ホームページなどをご覧下さい。
「御やど しきしま荘」へのお問合せ先
フリーダイヤル:0120-28-2808
TEL:0166-97-2141
天人峡温泉 天人閣
源泉掛け流しの湯 日帰り入浴も人気
- 目の前に雪景色の渓谷が広がる「水車露天風呂」
しきしま荘をチェックアウトした後は、もうひとつの温泉宿「天人閣」の日帰り入浴へ。こちらの温泉も100%天然。自然湧出の温泉をモーターなどを使わず引いてきて、源泉そのままに掛け流しています。湯船も種類豊富で、眼下に忠別川が流れ、峡谷が前面に広がる水車露天風呂、天然の岩肌の壁面を生かした野趣あふれる岩風呂、渓谷の名所である「見返り岩」を眺めることが出来る見返り露天風呂、五右衛門風呂、ひのき風呂などがあります。天人峡温泉発祥の宿らしいレトロなたたずまいが、日常を忘れさせてくれます―。こちらも秘湯と呼ぶにふさわしい味わいがありました。
天人閣の日帰り入浴は、午後0時30分~午後5時まで。入浴料は大人1000円、小学生は500円。タオルとフェイスタオル付き。また、宿泊プランは5813円(税別)から用意しています。 ※プラン内容や、宿泊時期、人数などによって変動します。
「天人峡温泉 天人閣」へのお問合せ先
TEL:0166-97-2111
シャトルバスも運行中!