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格安が売りのネット印刷。ありがたいサービスではありますが、地元密着フリペとしては、やはりできる限り地元の印刷会社を応援したい―。悶々とした思いを抱えているとき、旭川の企業2社がユニークなアイデアを展開していると耳にしました。
179市町村の包装紙?!
創業70周年を迎える(株)総北海(旭川市工業団地2条1丁目、電話0166-36-5556)は3月、インターネット上に包装紙の販売ショップ「わたしのまちの包み紙」をオープンしました。市町村のキャラクターや特徴を盛り込んだデザイン包装紙で、上川エリアでは現在までに旭川市4柄、東神楽町、鷹栖町それぞれ1柄を販売しています。
企画は昨年7月にスタート。取引先に包装資材の提案に行くと、すでにオリジナルの包み紙を使っていました。しかし多くの店にとっては、オリジナル品を作るのはコストがかかるはず…と、大量印刷で制作費を抑えたご当地包装紙のアイデアが生まれました。
驚きなのは、これを全道、全179市町村とコラボしようとしていること。もともと様々な自治体のポスターやパンフレットなどを企画、製造していたことから、田村総司郎社長は「これまでのデザインを生かせばすぐに完成するはず」と考えたそうですが、ことはそう単純ではありませんでした。
例えば魚介を包む包装紙に農作物が描かれていては…という自治体側の逡巡もあって、少なからず手を加える必要が出てきました。「やってみてわかることが多かったですね」としみじみ振り返るスタッフ。札幌支社では、観光客や土産品店が多いニセコエリアなど10数カ所で企画が進行しており、発案者の田村社長は今後のさらなる展開に期待しています。
50枚入りで、4切サイズ(526×388mm) 1080円、倍の半切サイズ(526×776mm) 1620円。送料別途。商品が透けないよう厳選した再生紙を使用し、できる限り薄くして、包みやすさにも留意しました。スタッフは「地域振興にも役立つ包装紙です。お店はもちろん、企業の記念品パッケージにもご利用ください」とPRしています。
特殊加工がてんこ盛り
鮮やかなブルーの地に、愛らしい少年が描かれた「ドルックくんとなぞのドア」。一見変哲のない絵本に見えますが、ひとたび触れば、あるいは光を反射すると、表面に無数のDの文字が刻まれていることに気付きます。
これは「UV擬似エンボス加工」と呼ばれる印刷技術。通常、油性インクを使うオフセット印刷ではインクが乾くまでに3~4時間かかりますが、この印刷では特殊なカラーインクを紫外線で瞬時に硬化させ、さらに性質が異なる2種類のニスを塗り重ねることで柄を浮き出させています。
「この印刷ができるのは、道内ではわが社だけではないでしょうか。10年前から導入しています」と胸を張るのは、印刷・製本会社の(株)ドルック(旭川市工業団地2条1丁目、電話0166-36-1116)の常務・小野晃浩さんです。しかし通常印刷よりは費用がかかるため、出番はそう多くはありません。この状況を見た社員が昨秋、「うちの特徴をもっと楽しく、わかりやすく伝えたい」と様々な印刷・製本技術を盛り込んだ絵本のアイデアを提案しました。
全20ページの中に、UV擬似エンボスのほか、型抜き、香り印刷、箔押し、ポケットなど盛り込まれた加工は9種。少年・ドルックくんがなぞのドアをくぐり、闇の中、雲の上、お花畑と冒険を進めるストーリーの中で効果的に登場します。「もしも自分がこの技術を使うとしたら…」とわくわくと想像が広がる仕掛けに満ちた一冊です。
実際のところ、これだけの技術を詰め込むと制作費はウン十万円…。印刷・製本見本にしては高価すぎるのでは?と小野常務に率直な疑問をぶつけると、「わが社の技術力を個性的にお伝えできる素晴らしいツール。特殊印刷を検討している企業には無料で配布しています。次回作もご期待ください」といたって前向き。思わず手に取り、ずっと置いておきたくなる存在感はプライスレスといったところでしょうか。
顔を見ながら相談できる身近さは、ネット印刷にはない安心感を与えてくれます。今回あらためて、地元印刷会社の頼もしさを感じることができました。