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この日、旭川をはじめとする道北地方の各地では市街地で初雪を観測。
ベベルイ川の清らかな響きの中、しんしんと積もる雪…それは初雪とは思えぬほどの降雪で、ぶどう畑は一瞬にして真っ白な世界に包まれています。
わたしたちを迎えてくれたのは愛らしいワインショップ。
急遽お休みとなった剪定作業の貴重なお時間、オーナーである多田繁夫さんのお話を伺うことが出来ました。
実はライナーでは以前にも取材をさせていただいたことがあり、その当時(2014年)は3種類のぶどうを栽培、委託醸造を行っていた頃で、憶えてくださっている方もおられることと思います。
2007年、700本のピノ・ノワールの苗木から始まった多田ヴィンヤードは、偶然の連続の中、障がいをもった人たちに働く場としてぶどう畑が最適であるという確信のもと、働く場の提供を第一目的として増殖をされてきました。
主に栽培されいているのはヴィティス・ヴィニフェラ種。品種は多岐にわたり、ピノ・ノワール、シャルドネ、バッカス、メルロ、キャンベル、ナイヤガラ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどで、ミューラートルガウを増殖され、シラーを試験栽培中でもあり、近年はりんご栽培にも着手されています。
収量が増えるにつれワインの評価も上がり、現在ではおよそ4ヘクタールに、約7,000本の樹々を守っていらっしゃいます。
何よりも大きな変化は、ワイン造りをはじめて10年目の秋、自前の醸造所が稼働したことでしょう。
北海道で33番目のワイナリーとなった多田ワイナリーは、50年前からある建物を利用して設えており、室内には整然とタンクが並んでいます。10Rワイナリーや宝水ワイナリーで醸造していた頃と同様に、野生酵母で特徴的なワインを醸しています。
経験豊富で見聞も広い多田さんは、お付き合いのあるワイナリーはもちろん、醸造家、栽培家との繋がりも多く、各地の皆さんと交流を深め、情報交換をなさっています。
かつて病気や凍害でご苦労されいた時期、6〜7年前は植え替えをすすめられたほどに元気をなくしていたぶどうの樹々は、この4〜5年で少しずつ回復の兆しが見えはじめ、今年はかなり良い状態になってきているそうです。
「苗木が育つのまで4〜5年かかるものだが、ダメージからの回復も同様に時間がかかる。
イメージしている樹の姿にもっていくための手入れを続け、見守っていくことが大切。」多田さんは静かに語ります。
大変な時期にアドバイスをくださっていた原料供給農家の方が最近の回復の様子に驚かれ、素晴らしい復活劇を産んだ多田さんのスタイルを絶賛したとのこと。
「ほめられて嬉しかった。」とちょっと照れくさそうに語る多田さんの微笑みに胸キュンでした。
寒さに弱いヨーロッパ品種はただでさえ冬を越すのが難しいと言われていますが、この富良野盆地は寒暖の差が大きく、時にその差は60℃を超える程。
醸造用ぶどう栽培にとって厳しい気候の中、長年に渡りぶどう達と歩んできた多田さんの瞳には、優しさやあたたかさとともに、力強さを感じずにいられませんでした。
ぶどう造り、そしてワイン醸造に向き合う真摯な姿、柔和な笑顔の奥にとても説得力があり、
多田さんが紡ぎ出す「ワインは農産物」という言葉の意味を、あらためて深く感じさせていただきました。
お話を伺った次にご案内いただいたのは倉庫。この中には、これからラベル貼りをされ出荷を待っているボトルたちが所狭しと積み上げれれています。
どんな場面で抜栓され、どんなお料理と合わせて楽しまれるのだろう…と、妄想がどんどん膨らみ、その箱の山に囲まれているだけで興奮してしまいます。
そして、なんとこの日は圧搾作業の真っ最中で、ガラス越しに醸造長のお仕事を拝見することが出来ました。
見学させていただいた時間帯はまさにプレス作業の真っ最中。
タンクから果実を取り出し、きびきびと作業が進められています。
圧搾されたプレスワインはこの後フリーランワインに混和され、ゆっくりとバランスを調えながら風味を向上させていくのです。
2020年はぶどうにとって恵まれた気候で、灰色かび病や鳥害も少なく、糖度も上出来でした。
10月12日、バッカスから今年の収穫が開始し、その次(17日)のシャルドネは、近年にないとても良い状態での収穫ができたそうです。
10月28日からは剪定作業が行われ(お邪魔した日は降雪が多かったため急遽様子を見ておやすみ)11月下旬までは基本的に、雨の日も雪の日も剪定が続いていきます。
ワイン造り、ぶどう栽培には休みがありません。
これから冬を乗り切り、芽吹きの春を迎え、畑の仕事やワインの醸造だけでなく、多田さんみずから各地をまわったり、取引先への訪問など精力的にこなされるそうです。
あらゆる手間をかけて育んできた実り、凝縮されたその果汁は、手掛けた皆さんの思いと共にじっくり熟成されていきます。時を経て仕上がったひとしずくには大変な愛着がわくことでしょう。
小学校側に植えられたりんごはぶどうに先駆け、10月8日から収穫スタート。
トップバッターは紅玉、800kgありましたが、虫食いなどの被害のため選定後は600kg、大変おいしい果実だったそうです。
その後のシナノゴールドも酸と甘味のバランスが絶妙で、とてもいいりんごに仕上がっていたとのこと。まずはシードルやりんごジュースの試作品づくりをしたり、
今後はりんごの加工(ピューレなど)も見据えて、新商品を開発予定との事で、来季はショップに並ぶ仲間が更に増えていきそうです。
多田ワイナリーで販売されているワインは現在8種。シードルもすべて「よつば舎」あべみちこさんデザインのエチケットで、お客様から大変支持されています。
人気のピノ・ノワールやシャルドネをはじめ、ピノ・ノワールのブランやメルロのブランなど、ちょっと他では出会うことの少ないワインや微発泡のもの、そしてシードルと、とてもバラエティに富んでおり、様々なシチュエーションと合わせて楽しむことができます。
農園にあるショップは基本的に土日の営業で、旭川市内で購入できるお店は現在3箇所、まるしん商店、酒々おがわ、イオンモール旭川駅前きた・キッチン、他には旭川空港や千歳空港の売店でも入手可能です。
ものによってはリリースしてすぐに完売になってしまうものもあるそう。
ネットショップも充実していますので、是非一度、お手にとってみてください。
多田ワイナリーのワインにもっと触れてみたい、という方に大変おすすめなのは、ワインの畑の会です。
こちらではぶどう畑を応援したい「ワインの樹」のオーナーを募集中です。入会より3年間、出資のお礼として毎年ワインのプレゼントがあります。
気候によってワインではなく野菜や加工品になることもありますが、そちらもまた楽しみですね。
特典の詳細につきましては、多田ワイナリーのホームページでご確認ください。
オーナーになると読むことが出来る、多田農園通信もみどころ満載。
多田さんが丁寧に執筆されており、ファーム・ワイナリーの「今」を知ることが出来ます。
ネットショッピングを利用された方にも商品と一緒にお届けされるそうです。
野菜づくりから始まった多田農園は、来年120周年を迎えます。
近くの神社の石碑には入植者として、多田さんのご先祖様の名前がはっきりと記録されているそうです。
明治34年(1901年)からこの地で根を張り、農園、加工品の販売だけでなく、ペンションやカフェといった多角的な経営をされ、ワイナリーとしての活躍も注目される多田さん。
多田さんの描く未来は、現在のぶどう収量の倍にすること、タンクを増やすこと、品質をより高めていくこと、
そして目指すはワインは15,000本。
来年は記念のイベントを行い、収穫の喜びを、たくさんの方と共有できたらと計画されています。
ピノ・ノワール700本から始まった多田さんのストーリー、今後ますます広がっていくことでしょう。人と人のつながりを大切にされている多田さんの、その新たな一歩が、これからも楽しみでなりません。
有限会社 多田農園
〒071-0529 北海道空知郡上富良野町東9線北18号
TEL 0167-45-5935
FAX 0167-45-6012
2018年C.N.(キャンベル&ナイヤガラ) 野生酵母
キャンベル60%・ナイヤガラ40%、酸化防止剤(亜硫酸塩)
2018年に収穫したキャンベル&ナイヤガラを野生酵母で発酵して造りました。
豊かな伏流水とエネルギーが集まる富良野岳の麓にある多田農園で、道産キャンベルとナイヤガラを野生酵母で発酵させブレンドし、無濾過でつくった多田ワイナリーの白ワインです。
特徴:柑橘系や花の香りが感じられ、キリッとした酸味が特徴でフレッシュな印象。白身魚のグリルや貝類のシンプルな料理、またチキンのハーブ焼きなどと相性がよさそう。