内容のー部もしくは全部が変更されてる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
毎年100万人近くを動員する北・北海道を代表する冬のイベント「旭川冬まつり」を支える人物がいます。本職は大工で、20年以上旭川冬まつりに携わる伊林仁さん(70)。今年は、新型コロナウイルスの影響で、いつもの石狩川河川敷での集客イベントは開催できませんが、これまでいくつもの課題に臨機応変に対応してきた伊林さん。「こんな年こそ、工夫を凝らして旭川の冬を盛り上げたい」と張り切っています。
旭川出身の伊林さんは、自動車ディーラーの営業職を経て、20代で大工の見習いに就きました。「誰かが描いた設計図通りの作業は、性に合わない」という根っからの職人。加えて、「あきっぽい性格」というから、同じことの繰り返しは好みません。親方のもとで10年下積みを積んだ後は、「ユンボに乗りたい」と、家業の曳家(ひきや)の仕事の手伝いながら、建設機械の免許を取得しました。
夏は一人親方として、新築やリフォーム工事を手掛けます。30~40代のころは、冬はサロマ湖で趣味の釣りざんまいでした。季節雇用の小さな仕事をすることはありましたが、冬は比較的時間が空いていました。そんな時、知人から紹介されたのが、旭川冬まつりの会場整備の仕事。大工仕事とは違う、冬のイベント会場づくりの仕事に興味が膨らみました。
市民雪像のベースとなる雪のブロックを作るのも伊林さんの仕事。コンパネを4枚貼り合わせて型を作り、そこに雪を詰め込んでいきます。「1月の気温なら、だいたい2時間くらいで雪は固まる。それより短かったら崩れるし、長いとコンパネに雪が張り付いてしまう」。そうした感覚は、屋根から落ちた雪山に穴を掘って秘密基地を作ったり、古いスキー板と木箱を利用してソリを作ったりと、子供のころの雪遊びで自然と身に付きました。
堤防から河川敷会場へとつながる「バルコニー雪像」が、現在の形になったのも伊林さんのアイデア。それまでは、河川敷会場に張り出すように作っていたため、大雪像のステージ前のスペースが狭くなってしまっていました。当時の観光課職員から相談を受けた伊林さんが、通路も兼ねた現在のデザインを提案。以来毎年、現場の御意見番として、自衛隊の雪像隊による雪像づくりのサポートにあたっています。バルコニー雪像が、花火鑑賞の特等席になっているのはご存知の通り。
まつりが開幕しても伊林さんの仕事は終わりではありません。期間中、歩行者の安全のために、歩道を急遽作ったり、新橋側の駐車場を少しずつ拡張する作業や会場警備の仕事も担当しています。
「あの水銀燈から何メートルの位置が目安とか、雪が降っても目印になるものを基点に、会場のレイアウトをイメージする。何年もやっていると、音響会社が持ち込むプロジェクターの性能なんかも分かってきて、あの会社のオペレーション室はこの位置にとか、そんなことまで考えるんだよ」と笑います。
今年の旭川冬まつりは、「みんなの冬2021」と題して、市民がそれぞれ、コロナ禍で尽力する医療従事者への感謝の気持ちや、家族や友人など大切な人への思いを雪だるまや雪あかりに託し、このまちを温かい気持ちでいっぱいにしようという取り組みを行っています。
誰も経験したことのない今年の冬まつり。けれども、「前例や設計図のない仕事こそ面白い」と語る伊林さん。日々、相棒である甥っ子の義人さんと一緒に、雪だるまを飾る棚や、雪あかりのオブジェを制作しています。2021年の旭川の冬は、どんな風になるのか。伊林さんの表情を見ると、きっとみんなのエールや笑顔があふれる温かなイメージが膨らんでいるに違いありません。【PR】