内容のー部もしくは全部が変更されてる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
- 焼きそばを調理する吉岡さん(手前)と見守る森藤社長(撮影のため、マスクを外しています)
本場・大阪仕込みのお好み焼きや串揚げが人気の「粉もんず豊岡本店」(旭川市豊岡4条8丁目2-27)で、元旭川グランドホテル(現OMO7旭川)総料理長の吉岡将之さん=写真手前=が勤務しています。定年退職後の再就職で、旭川を代表するシティホテルの調理部門の元トップが、人手不足で苦しむまちの飲食店を下支えしています。
吉岡さんは、大阪の調理師学校を卒業後、そのまま大阪のレストランやホテルで経験を積み、1983年に旭川に帰郷。旭川グランドホテルの前身であるニュー北海ホテルに入社し、1994年に旭川グランドホテルの立ち上げに参加、宴会厨房に配属されました。洋食料理長を経て、翌2007年には総料理長に就任。退職後も、全日本司厨士協会北海道旭川支部の支部長や、氷彫刻世界大会の事務局長などの公職を引き続き務めています。
再就職の話は、札幌のホテルなどいくつか打診がありましたが、家族を残して旭川を離れることは考えられず、引退するつもりでいました。そんなとき、ご当地グルメ「旭川しょうゆ焼きそばの会」で交流があった粉もんずの森藤博行社長から声がかかりました。森藤さんは「ホテルの西洋料理とお好み焼きでは業態がまったく違うけれど、長年の調理現場の経験から学ぶべきことはたくさんある。従業員には、技術的なことだけでなく、仕事に向き合う姿勢も学んでほしい」と話します。
ホテル時代は、全国規模の学会やシンポジウム、結婚式など家族の大切な時間のための料理を提供するのが仕事でした。大きなやりがいを感じていた一方で、「肩書だけが大きくなって、日々料理と向き合えていないことにジレンマも感じていました」。総料理長時代は、ホテルの顔として毅然とした姿勢でいることを求められましたが、いまはスタッフと飾らずにコミュニケーションをとれるのが楽しいと言います。
現在は、夜の営業で厨房の鉄板に向かい、お好み焼きや焼きそばを調理する焼き手を任されています。「注文が入ってから調理をするのは久しぶりで、最初は戸惑いましたが、分からないことは店長やアルバイトの子にもすぐに聞いています。充実していますよ」と笑います。お酒好きでもある吉岡さんが手がける晩酌セットが今後、登場することもありそうです。
飲食店の人手不足は全国的な傾向で、旭川も例外ではありません。コロナで休業を迫られた飲食店はアルバイトを解雇したり、シフトを減らしたりせざるを得ず、営業を再開したからといっていきなりシフトを増やすことは難しいのが現実です。大手外食チェーンではタッチパネルやタブレットによる注文、AIやロボットによる接客で業務の効率化が進む中、まちの飲食店では、調理師経験のあるシニア層が運営を支える動きが広がっていくかもしれません。