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- 「あたたかき日光」を手にする著者の田中館長。光世さんが大好きな「将棋の駒」にまで嫉妬する綾子さんのかわいらしい姿も
旭川で生まれ育ち、作家として活躍した三浦綾子さんの夫、光世さんの日記をもとにした小説「あたたかき日光(ひかげ) 三浦綾子・光世物語」が、北海道新聞社から発刊されました。
光世さんが14歳から晩年までに遺した63冊の日記をもとに、三浦綾子記念文学館の田中綾館長が執筆。綾子さんの生誕100年記念作品として、2022年3月から1年間全50回の北海道新聞朝刊での連載を一冊にまとめました。
当初は、光世さんの日記を論文としてまとめるつもりで研究を始めましたが、三浦夫妻の姿をより多くの人に知ってもらうため、読みやすい小説の形にしました。朝日新聞1千万円懸賞小説に入選した「氷点」創作の裏側や、綾子さんと光世さんの出会い、複数の連載を抱える人気作家になってからの夫婦の日常、病と闘いながら励まし合い続ける夫婦の愛の姿などが描かれています。
歌人でもある田中さんは、構想当初から綾子さんと光世さんが遺した「短歌」を物語に引用することを考えていました。綾子さんがかつての恋人、前川正さんそっくりの光世さんと出会った場面、光世さんが幼いころ仕事で不在だった母を思う心情、夢の中で亡き綾子さんに「もうどこへも行くな」と語り掛ける一首などが、言葉の結晶として引用されています。
終戦を迎えてしばらく、光世さんの日記の一人称が「私」から「俺」に変わったことについて、田中さんは「国家のイデオロギーを信じていた青年がすべてを失い、これからどう生きていくのかという葛藤を痛切に感じる」と語ります。また最終章は、小林多喜二の母セキの一人称で綴る「母」をイメージして、光世さんが読者に語り掛ける文体にしました。
田中さんは、「敬虔なクリスチャンで人気作家であると同時に、お互いをいたわり合って静かに暮らしていた人間・三浦夫妻の姿を知ってほしい」と語っています。A5変型判、220ページ。1980円(税込)。全国の主要書店で発売中。