身近にある施設や商品、催し物など様々な仕事の舞台裏に、ライナー編集部が密着しました
気になるあの場所へ潜入!
旭川市東旭川学校給食センター ポプラキッチン
旭川市東旭川町上兵村544番地
Tel.0166-36-1320
令和2年1月に開設した、道内でも新しい給食センター。旧センター時代に給食を提供していた小学校の児童から愛称を募集し、同じく給食を提供先の中学校の生徒会による審査を経て「ポプラキッチン」と名付けられた。給食センターとしての機能だけでなく、食育のための見学コーナーや、会議などに利用できる研修室や調理実習室を備え、予約をすれば市民も利用することができる。
子供たちの元気の源 毎日の給食にかける想い
東旭川の田園風景の中に、真新しいシルバーの建物がそびえ立つ。ここ給食センターポプラキッチンでは、市内の小中学校合わせて12校分の給食が毎日作られている。調理員のほか、管理栄養士など総勢40人以上で作る食数は、1日3800食。学校内で作る給食とは違い、毎日2種類の献立を作るというのもセンターの特徴だ。給食は子供にとっての楽しみのひとつ。そのウラ側へ、いざ密着。
安全で安心な給食を下処理から入念に
給食ができるまでの工程は、食材の荷受けから始まる。野菜と果物、肉と魚と卵、豆腐と調味料類の3つの部屋に分け、荷受けの段階から食中毒を防ぐ徹底ぶりだ。朝の7時頃から始まる下処理の工程の中でも、特に力を入れているのが洗浄作業。野菜の下処理専用の部屋で、根菜類は3回、葉物野菜は定められたマニュアル以上の4回と、汚れはもとより目に見えない有害微生物や虫の混入がないよう入念に洗浄している。
給食には、バランスよく栄養を摂るという以外に食習慣を身に付けるという役割もある。子供の頃の習慣が、大人になってからの食生活に影響するからだ。「例えば、給食の野菜から虫が出てきたということがあると、その子にとっては一生のトラウマになることも。安全と安心を第一に考えています」と主査を務める山村誠さんは話してくれた。また、肉など汚染度の高いものとそれ以外の食材が交差しないよう動線が決められていたり、アレルギー対応メニュー専用の調理室があったりと、思いだけでなく設備や仕組みによって安全と安心が守られていた。
立ち昇る湯気といい匂い 食べ頃まで緻密に計算
下処理が終わると、容量400リットルの6台の釜で調理が始まる。取材日は、秋野菜の煮物とペスカトーレという異なるジャンルの料理を、3台ずつで作っていた。釜のふたが開いた瞬間、魚介とトマトソースの香りが広がる。別の釜で茹でたパスタを豪快に投入し、1メートル以上はありそうなしゃもじ「スパテラ」で手際よく混ぜ合わせていく。息の合った連携に見惚れていると、徐々に完成形が見えてきた。反対側の釜では煮物も完成したようだ。
ここで、管理栄養士と栄養教諭による味の調整が行われる。食缶に配缶される前の、大事な工程だ。筆者も特別に試食させてもらったのだが、なんとこの時点ではまだ完成ではなかった。パスタは芯がしっかり残るほど硬く、煮物には味が染み切っていない状態。ここから、保温性抜群の食缶の中でじっくりと火が通っていき、給食の時間にちょうど食べ頃となる。
トライ&エラーの積み重ね 苦手をなくす創意工夫
午前の作業を終えてひとときの休憩のあと、返ってきた食器や食缶の洗浄作業を経て一日を終える。残った給食も返ってくるのだが、どの学校でどの程度残ったかを毎日計って記録していた。この残り具合によって、人気の度合いを見極めている。献立を担当する栄養教諭の宮崎彩花さんは、「苦手な野菜も切り方ひとつで印象が変わります。あまり人気がなかったメニューが前回より食べてもらえると、すごくやりがいを感じますね」と笑顔を見せる。
3800食というと膨大な量だが、最終的には児童や生徒の一人ひとりに届けるもの。毎日食べるものだからこそ、新たな発見や出合いを楽しんでほしいと願いながら、今日も試行錯誤を続けている。
さらに深部へ ルポ・あれこれ
一つひとつ、作業は丁寧に
大量の玉ねぎを、1つずつ黙々と包丁で切る。機械でもできるのだが、切り方まで細やかに気を配るためにできるところは手作業で行っている。1つ切るだけでも目が染みるというのに、この光景には頭が下がる。
巨大コンテナでそれぞれの学校へ
食缶に詰めた給食は、専用のコンテナに積んで9台のトラックで配送される。学校ごとに量が違うため間違いは許されない。コンテナも専用の機械で洗浄しており、常に清潔だ。
こんなところにあさっぴー
給食の開始から昭和50年代頃まで使われていたアルマイトから始まり、現代に至るまで時代に合わせて食器の材質も変わってきた。今の食器にはあさっぴーが描かれ、なんともキュートだ。
編集後記
みそ汁は煮干しやかつお節から出汁をとり、カレーのルウは小麦粉を練るところから始め、ラーメンは鶏ガラでスープを作る。素材本来の味を知ることで、食への関心や好奇心を知らず知らずのうちに育ててくれるのだろう。取材中、テキパキと仕事をこなす姿に、調理員さんが皆お母さんに見えてきたのは言うまでもない。毎日栄養がしっかり摂れる子供たちが羨ましい。残った給食の重量分だけ、悲しむ人がいる。それだけは覚えておきたいと思った。