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- ©清智英・大倉かおり/講談社・2018映画「レオン」製 作委員会
久しぶりに映画館で声を上げて大笑いした。「わたしたち、入れ替わってる!?」という例のアレをとんでもない話に仕上げている。
脱サラして起業し、一代で年商五百億円の大企業に育てた敏腕社長の派手なオッサンと、その会社を首になった派遣社員の地味めな女子。この二人が入れ替わる。その設定だけを聞くと、なんだかストーリーが読めるような気がする。しかし案ずるなかれ。本作は思ってもみない方向に転がる。
この作品は悶絶ものの面白さを誇っている。その要因の大部分は俳優陣の芝居だ。とにかく濃い。女子と入れ替わってしまう社長の竹中直人は頂点級の濃さを誇る名優だが、その秘書役がミッツ・マングローブ。この二人だけでもうカルピスの原液をさらに煮詰めたような濃さでドロドロである。さらに本作はそれだけにとどまらず、入れ替わる相手の知英(ジヨン)、イケメン女ったらし役の山崎育三郎などとにかく濃い。ものすごいパワーを誇る俳優陣のエッセンスをぎゅうぎゅうに絞り込んだ濃縮トマトジュースのような味わいだ。
まさに抱腹絶倒。映画館でゲラゲラ笑うような映画。何本かに一本はこういう底抜けに楽しい映画を見たいものだと改めて思った。(映画ライター・ケン坊)
シネプレックス旭川で上映中。
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
『レオン』と聞けば多くの人はジャン・レノのあれを思い浮かべるのではあるまいか。かく言う私も、タイトルを見た瞬間には、あの『レオン』のリメイクなのではないか、と考えた。しかし作品のポスターを見るとどう考えても全く別の世界である。ポスターを見ただけでもう、この映画を見ないという選択はあり得ないと思ってしまう。大企業の社長である朝比奈玲男と、その会社を首になる派遣社員の小鳥遊玲音。この二人が入れ替わる。わたしたち、入れ替わってるぅ!?とくれば『君の名は。』。名前?そう。名前である。れおとれおん。入れ替わる二人の名前が極めて似ている。この類似性にまさか意味があるとは。
あらゆる芝居が全部素晴らしく、最高に楽しい。それだけで十分な満足を得られてしまう。でも実は、ストーリーもなかなか面白い。立場や性格、性別、年齢まであらゆる要素が異なっている二人。そういうかけ離れた二人が中身だけ入れ替わるという設定はそれほど斬新なものではない。しかし本作はただそれだけでは終わらず、さらに凝った展開を用意している。凝った展開というのは会社の乗っ取りに関わる陰謀とかそういう部分のことではない。その辺についてはもう全面的にデタラメなもので、そこをまじめに描くつもりがないことは最初から明らかだ。しかし登場する主要な人物については、ふざけているように見えながら実はかなり丁寧に描いている。ゲラゲラ大笑いするようなコメディであるにもかかわらず、じんわりと胸の奥に広がる何かを残す後味の良さも備えている。
見事な俳優陣がそれぞれの最上級の「芸」を惜しげなく披露する。これぞまさに芸能である。しばらく頭を冷やさないと次の映画が頭に入ってこないような気もする。