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なぜ今更ジュマンジなのか、と思いもしたけれど、見てみたらなるほどと思った。本作は、ボードゲームの世界に入り込んでしまう『ジュマンジ』をビデオゲーム時代にアップデートしたものだ。とはいえ現在からみればそれさえ20年前。レトロゲームという設定である。
プレイヤーはそのゲーム内に吸い込まれるわけだが、自分自身として入り込むのではなくゲームキャラクタに憑依したような状態になる。オンラインゲームなどで現実の自分とは全く異なる性格のキャラクタを「演じて」いる人も少なくない現代、この『ジュマンジ』のアップデートはそこそこ「今風」と言えそうだ。
しかし。本作はゲーム中で演じるキャラクタによって本来の自分の性質が影響を受けるような描き方がされている。この点については、現実にはゲーム内キャラクタと本来の自分がどんどん乖離し、ゲーム内で明るくポジティブな人物ほど、現実ではどんどん内側へこもっていく傾向があるようにも思う。映画は本人とキャラクタの距離がプラスの結果を生んでいるけれど、果たして現実ではどうなのだろうか。
いつの間にか世界は『ジュマンジ』をはるかに追い越したところを走っているのかもしれない。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
ゲーム世界に吸い込まれてしまい、ゲームを現実のように体験する。思えばなんという先見性だろう。本作はその『ジュマンジ』を今風にモディファイした作品で、一応20年以上前の映画『ジュマンジ』の続編という位置づけだ。ストーリーが直接つながっているわけではないものの、前作に登場した人物が本作にもわずかながら影響を及ぼしている。
今やバーチャル・リアリティのようなものまで登場し、自分がそのままゲーム世界に入っていく、という体験はもうすぐそこまで近づいてきている。時代が『ジュマンジ』に追いつき、ある部分ではすでに追い越したのかもしれない。
本作にはオープンワールド風のロールプレイングゲームといった風合いの『ジュマンジ』が登場する。一応「ステージ」や「ライフ」といった考え方が出てきて、あくまでレトロゲームだという見せ方はされている。しかし攻略はかなり自由度が高く、用意された「解」を追うようなものではない。そのオープンな部分が極めて現代風だと感じた。
本作のポイントはやはり、プレイヤーたちは現実の自分とは関係なく、ゲームのキャラクタになりきって生きるという点だろう。本来の自分にはできないことが、ゲーム内のキャラクタになりきっていればできる。本来の自分には言えないようなことが、ゲーム内のキャラクタであれば言える。そして、ゲーム内であってもそれを成し遂げたという体験は自信につながる、ということを描いている。つまりゲーム内で別人格を演じることが本人のプラスになる、という描き方がされているのだ。
本当にそうならステキだなと思う。ゲーム内で成功体験を得ることで現実の自分が自信を持てる。そして次第に現実の自分が磨かれていく。そうであればもっともっとゲームに没頭することを推奨するような事になっていくでしょう。しかし実際には、マイナスが増幅されていくような人も少なくない。ゲーム内キャラクタと本来の自分がどんどん乖離していき、ゲーム内はゲーム内で充足が得られてしまえば現実などどうでもいい、という領域に達する。すでに達してしまっているような人すらいる。
そのうち本作の『ジュマンジ』みたいなゲームが普通のものになり、わざわざ映画にする意味がないというような時代が来るかもしれない。恐ろしい時代になったものです。