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デカい。ばかばかしいほどに。
最先端の遺伝子化学が暴走して動物が巨大化する、という一応SF風の何かはプロローグでちょびっとだけ描かれる。だがしかし。あっという間にそんなものはどうでもいいという潔さで塗りつぶされる。ストーリーにも科学考証にも説得力はまるでない。人物もその背景は少し垣間見えるものの、あまり深くは描かれない。辻褄を合わせようとする気配も、ご都合主義的展開を避けようとする気配もまったくない。遺伝子化学を悪用しようとしている悪の企業についても、その悪を暴くといった方向へは行かない。そういったことが何一つ作品のマイナスポイントにならない。これはそういう作品なのだ。
軍隊が総力を上げても歯が立たないものにたった一人で向かっていく主人公。この主人公を演じているのがドウェイン・ジョンソン。もはやパシフィック・リムのロボットとほとんど同じ位置づけだ。人類の切り札ドウェイン・ジョンソン。ランペイジ(大暴れ)ぶりでも巨獣に何ら引けをとらない。なんだか勝てそうな気さえしてくる。
ケタ外れのモンスターに挑むケタ外れの主人公。これぞドウェイン・ジョンソン。なにはなくともとりあえず痛快。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
つい先日紹介した『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』にも出ていたドウェイン・ジョンソン。ここでも大活躍だ。ちょっと笑いの要素があるのが彼の魅力だと感じる。
冒頭、宇宙ステーションで何かの実験中に問題が発生したことが描かれる。ここで「なるほどそうだったのか」と思う。何らかの遺伝子操作実験が行われていて、その成果物としての薬品のようなものが地上に落下する。「ああ、そういうSFなのか」と思う。しかし。このプロローグはほとんどオマケみたいなもので、動物が巨大化することに何か理由が必要だったからつけた、という程度のものに過ぎなかった。文字通り取ってつけたような理屈なのであった。
この実験を行っていたのは遺伝子操作技術を兵器として売ろうとしている企業だった。宇宙ステーションそのものが企業の所有であったような描き方になっているし、そこで開発されていた遺伝子操作技術はまさにご都合主義のためにあるような都合の良いもので、様々な生物の能力を寄せ集めてすごい生き物を作る、といったことが可能になっている。清々しいほどに、どこにも説得力らしきものがない。
この設定のおかげで、オオカミはハリネズミみたいに針を飛ばしたり、モモンガみたいに飛んだりする。ワニに至ってはもはやワニの原形を留めておらず、姿からして完全に怪獣である。それなのにゴリラは、同じ薬品で巨大化したはずなのに、あくまでゴリラのままデカくなっている。もちろん、ストーリー上そうなっている必要があるからそうなっているのだ。こうしたご都合主義がこんなにも満載されていると興醒めになりそうなものなのに、この作品では不思議とほとんど気にならない。各所辻褄が合っていないけれど、それすらも気にならない。このなんでもあり感の要因の一つはおそらくドウェイン・ジョンソンだろう。彼は往年のシュワルツェネッガーみたいなもので、彼さえ出ていればほかのあらゆることは目をつぶれる、というぐらいにけん引力がある。
まさにアメリカ映画らしいアメリカ映画。どんなに時代が下ってもこういう底抜けな作品が出てくるのが楽しい。