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モンスター・ホテルシリーズの三作目なのだが、前作に比べて日本での扱いが極端に縮小されているのは気のせいだろうか。
ドラキュラを主人公に、ミイラ男、狼男(女もいる)、透明人間、フランケンシュタインなどが登場してドタバタを繰り広げるシリーズで、モンスターたちはそれぞれの特徴をわかりやすい形で発揮していて楽しいのだが、子供向けということを作り手が意識しすぎているためか、ストーリーは性急で忙しいし騒がしい。飽きさせないためにエピソードをてんこ盛りにしたのかもしれないが、かえって単調になってしまっている。音楽の使い方はとても良い。このシリーズは全般に音楽が良いけれど、本作は特に終盤で音楽がストーリーの核になる。クライマックスはさながらミュージカルのようだ。
一作目でドラキュラの娘が人間と恋に落ち、二作目で二人の間に生まれた子供は人間だった。受け入れ難きを受け入れてきたドラキュラ伯爵は本作でどこに着地するのか。
本作にはかのヴァン・ヘルシングも登場し、執拗にモンスターを抹殺すべくドラキュラに挑んでくる。モンスターを排除しろと叫ぶ彼が次第にモンスター化していくのが面白い。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
モンスター・ホテルはドラキュラ伯爵がホテルを経営しているという設定でモンスターの世界を描いたシリーズだ。一作目でドラキュラの娘が人間の男性に恋をする。種族を超えたというか、いろんなものを超えた愛だ。妻を人間に殺され、娘を溺愛しているドラキュラ伯爵にとって受け入れがたいことであったろう。二作目ではこの娘と人間の男性の間に子供が生まれる。ドラキュラ伯爵の孫だ。この孫がドラキュラの力を受け継いでおらず、純粋な人間として生まれる。これも伯爵にはガマンならないことであったろう。そして本作。冒頭からヴァンパイア・ハンターとして名高いエイブラハム・ヴァン・ヘルシングが登場する。本作はドラキュラが主人公なので彼は敵という位置づけになる。
そして。なんとドラキュラ伯爵はエイブラハム・ヴァン・ヘルシングのひ孫という娘、エリカ・ヴァン・ヘルシングに恋をしてしまうのだ。
多様性の具現化みたいなモンスターたちが登場し、人間とモンスターがともに存在する世界。その境界をまたぐ存在を描いている本作は、多様性の許容や差別の排斥といったことをテーマにしているようでもある。大人がじっくり楽しめるものになる要素はあるのだが、全体的に展開が目まぐるしく、動きはチャカチャカしているし、ギャグの程度も低い。子供向けということを考えても、もう少し落ち着いて内容を掘り下げても子供たちは十分楽しむのではないか。子どもを楽しませようとするのは素晴らしいのだけれど、「子供はこのぐらいしないとわからない」という誤った認識があるように思われる。
クライマックスにはクラーケンが登場するのだが、わたしが個人的に一番面白いと思ったのは、そのクラーケンが海底でベッドに寝ているシーンだ。大変な大きさの豪華客船と、それよりはるかにデカいクラーケン。そのクラーケンがベッドに寝ている。どんなベッドなんだろう。このわずかなワンカットが強烈に印象に残った。