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もしある日突然、奇妙な爺さんが現れてスーパーヒーローの力をくれたらあなたは地球を守りますか?『シャザム!』はそんなふうにして偶然ものすごい力を託された少年の物語だ。少年は変身することで大人になり、強大な力を持つヒーローになる。この「変身すると大人になる」というのは日本では「ひみつのアッコちゃん」から現在まで脈々と連なる魔法少女ものの定番だろう。魔法少女たちは立派で、成長した姿に見合うだけの中身を持っている。しかしシャザムは違う。姿が大人になっても中身は変わらないのだ。彼がヒーローのその途方もない力を使って何をするかと思えば、なんとユーチューブに動画をアップして一躍人気者となるのだ。正義の味方ユーチューバー。なんとも当世風だ。何かをやり遂げることができたら喜び、怖いものが来たら逃げる。素直な心。なるほどそのとおりだ。
母を赦せた主人公と父を赦せなかった悪役。偶然力を手にした主人公と長年努力し続けて手にした悪役。孤児を育てている里親と血のつながらない兄弟を守る主人公と実の父と兄を恨み続けて復讐を果たす悪役。一見ふざけているけれど、主人公と悪役の対比の中には深いメッセージが込められている。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
冒頭、最初に登場する少年が主人公かと思いきや、そうではない。このひねりから始まり、『シャザム!』は随所で人物関係のミスリードを誘う演出になっていて、あとから判明した事実でそれまで見てきたことを書き換えながら進んで行く必要がある。こういう構造はうまくハマるととても心地よいカタルシスをもたらすわけだが、この作品は少々後出しジャンケン感が強い。誰に感情移入すればいいのかが中盤までわからないので一歩引いたところから見る感じになってしまうのだ。
ヒーローになった主人公が繰り広げるドタバタは面白い。声を出して笑ってしまうようなシーンもいくつもある。でも感情移入できる要素が少ないので没入感がない。血のつながらない兄弟たちとの絆が育まれるという要素もストーリー的には重要なはずだが、フレディ以外の兄弟がほとんど描かれないのでよくわからない。終盤で彼らが全部ヒーロー化し、インクレディブル・ファミリーみたいなことになるわけだが、兄弟それぞれのキャラクタ性があまりはっきりしないままこのシーンになるので、しばらく見ないとどれが誰の変身した姿なのかわからない。
悪役の方も惜しい。彼がダークサイドに落ちる様をもっと共感できる形で描いていたら、この悪役も魅力的なキャラクターだったろう。それがあっさりとしか描かれないため、彼の怒りや恨みがそんなにも大きくなったことに説得力がない。個人的にはこの悪役をもう少し共感できるやつにしてくれたら良かったのにな、と思う。ラストシーンではこの悪役くんがまだまだ頑張りそうな気配があって、それであればやはりもっと丁寧に、こいつがこんなに曲がっちゃったのもちょっとわかる、っていう人物として描いてほしかった。ともあれ、まだ続きそうなのでぜひ次回作を期待したいし、いずれはジャスティス・リーグに参加、しますよね。