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誰もいなくなった部屋でおもちゃたちは何をしているのだろう。そんな世界を描いたトイ・ストーリーの4作目。ウッディ。バズ。ジェシー。おなじみの面々。4作目と聞いて、まだ4作だっけ?と思うぐらいに、このキャラクターたちは身近でいつも僕らのそばにいる。調べてみると1作目が公開されたのがもう24年も前で、当時5歳だった子は今やアラサー。当時最初のトイ・ストーリーにワクワクした子が、この作品を今度は親として、自分の子を連れて見に行くのかもしれない。
ものが溢れ、おもちゃもふんだんにある。次から次に新しいものを欲しがる。でもそんな時代になっても、子どもたちはなにか彼らなりの理由である一つに愛着を見せたりする。ときに不安を薄めてもらい、孤独を癒やしてもらい、踏み出す勇気をもらう。本作にはいろいろな立場のおもちゃが登場する。特別に気に入られているもの、クローゼットに置きっぱなしのもの、移動遊園地で射的の景品になっているもの、アンティークショップに並んでいるもの。
自分にとっての幸せとはなんなのか。それを自分は本当にわかっているのか。「心の声を聴くんだ」。世界は今日も広い。無限の彼方へ、さあ行くぞ!(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
トイ・ストーリーは言わずとしれたおもちゃの世界を描いたシリーズで、ウッディ以下、どこかにありそうなおもちゃたちがその特徴を活かした動きで僕らを楽しませてくれる。子どもたちのすぐそばにあるおもちゃの世界で、スリルやアクション、大冒険も満載。コミカルな楽しさも、大切な心の動きも、みんな詰まっている。最高のエンターテイメントというものがもしあるなら、これはそれにとても近いところまで迫っているんじゃないかと毎度思う。
僕らが見ていないところでおもちゃたちが…、というだけならこれほど深い作品にはならなかっただろう。持ち主の子どもが成長し、でもおもちゃはそのまま。子どもたちが立派に成長するとおもちゃたちはその役目を終え、おさがりとして別の子に譲られたり、幼稚園や保育園に引き取られたり、アンティークショップに並んだり、最悪の場合捨てられたり、する。大人はきっとみんな、おもちゃをどこかのタイミングで手放してきただろう。
シリーズはこれまでにもそういうおもちゃと人との関わりをおもちゃの側から描いてきた。もの言わぬ世界の住人にものを言わせてきた。僕らはそのたびに、大切なことに気付かされたような気になり、もっとものを大切にしようと悔い改め、しばらくするとそのことをすっかり忘れて断捨離したりしたかもしれない。
今回もウッディたちはボニーの部屋を飛び出し、でかけた先でまた違う境遇にあるおもちゃたちと出会う。本作がこれまでと違うのは、いつも子どものため、仲間のためにまっすぐに奮闘してきたウッディに大きな葛藤が訪れるところだ。ウッディの持ち主はあまりウッディを気に入っていない。それでもウッディはその子のために奮闘する。大きなリスクを取るときでもウッディに迷いはない。心の声がそう言っているからだとウッディは言う。
本作のラストシーン、ウッディは多分初めて、子どものことでもなく、仲間のことでもなく、自分の気持ちを優先した決断を下す。仲間たちはそれをあたたかく見守り、見送る。
心の声を聴く。それは大人になればなるほど難しく、聞こえた声を信じることはもっと難しい。ましてそれを遂行することは。でもウッディには背中を押してくれる友がいた。このラストシーンは本当に強く残る。文句なしの名作といえる。