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いったいどういうことなんだ。既に死んだはずの俳優が出てくる映画にも驚かされたけれど、この作品ではおっさんになったウィル・スミスが若いウィル・スミスと戦っているではないか。もしかしてタイムマシンって既に実現しているんじゃないのか。30年前のウィル・スミスに「30年後のあなた自身と共演してみたくないですか?」って連れてきたんじゃないのか。若い方のウィル・スミスはそれはもう面食らったことだろう。
凄腕の殺し屋が自分のクローンと戦うことになってしまう話、というのが予告編を見たときの印象だった。たしかにその通りの話なのだけれど想像以上にすごい。ウィル・スミス扮する主人公は50代のおっさんで、凄腕の殺し屋ではあるけれど引退を考えている。そして彼に向けて送り込まれる刺客は彼のクローンではあるけれど若い。20代のウィル・スミスなのだ。
ストーリー的にはボーンシリーズのような深みはなく、陰謀は薄っぺらいし後始末も適当。ご都合主義も全開だ。でもそんなことなどどうでもいい。だってウィル・スミスVSウィル・スミスですよ。ゴジラVSゴジラ的な破壊力。でも逆に、ウィル・スミス興味が無かったら見どころは無いかもしれない。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
最強の敵は自分自身だった。克己心を煽る安っぽい啓蒙書のタイトルみたいな話だけれどもちろんそうではない。クローン技術によって優秀な殺し屋のクローンを量産し、無敵の軍隊を作ろう、というような陰謀。それってスターウォーズのストームトルーパーでは? そのストームトルーパーをウィル・スミスで作る、というのが本作のお話。
引退を考える殺し屋の元に、彼自身のクローンである若者が刺客として送り込まれる。凄腕の殺し屋は過去最強の敵である自分自身と対峙することになる。そういうテーマだけを聞くと、そこからいくらでも深い話になっていきそうな気がする。クローン技術の方を掘り下げればSFになるし、引退目前の殺し屋を殺す必要性の方を膨らませればサスペンスにもなりそうだ。しかし本作はどちらにもならない。クローン技術はいとも簡単に発展し、単に正常に成長するクローンを実現しただけでは飽き足らず、遺伝子操作によって感情を持たない個体を作り出したり、同じ遺伝子を持つクローンを量産したりできるという。その辺の考証は一切ない。主人公を暗殺しなければならない必要性も薄く、どのような組織のどのような地位の人間がなぜどういう陰謀に関わっているのかもあまり深くは描かれない。主人公たちはけっこうな距離を移動するけれど、何でも操縦できるパイロットの友人がいて、プライベートジェットをあっさり貸してくれる友人もいる。国境をまたいでも全くおとがめなしなどご都合主義も満載だ。要するにストーリーは穴だらけであり、あちこち説得力に欠ける。
ではこの作品の魅力はどこにあるのかと言えば、それはもう全力でウィル・スミスである。ウィル・スミスというのは不思議な俳優で、彼自身は超A級のスターなのに、彼の出演作はどうもB級臭が漂っている。そんな中に会って本作はB+ぐらいの位置に留まっているが、さらにもう一歩踏み込んで、量産されたクローンが大量に登場して「ウィル・スミスVSたくさんのウィル・スミス」という、アイロボットを彷彿させるような展開があればウィル・スミス好きとしてはより楽しめるものになったような気もする。