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ホラー映画には二種類ある。震えるほど怖いホラーと震えない程度に怖いホラーだ。震えるほど怖い歴史的ホラー映画に『シャイニング』という作品がある。知らない、という人はネットで検索してみたまえ。「不敵な笑み」を絵に描いたような表情のオジサンがなにかの隙間からギロリと睨んでいるその絵はきっと見たことがあるだろう。作中でシャイニングとはある種の超能力のようなものを指す。でも隙間からギロリのインパクトがありすぎて、彼の目がシャイニングしているという意味かと思ってしまう。
なんで『シャイニング』の話をしているのかと言えば、この『ドクタースリープ』はなんと『シャイニング』の続編なのだ。呪われたホテルで気が狂った父さんに殺されそうになる少年。その少年のその後である。
と、仰々しく前置きしておいてなんだが、本作はその前作とは全く異なる作品であった。ほとんど人ならざる者同士のサイキックバトルである。前作とはまるで雰囲気が異なるが、シャイニングという意味では前作より本作のほうがそのシャイニングを描いているとも言える。そんな風に派手でありながら、「死」というものについて考えさせられる作品でもある。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
『シャイニング』の続編だと聞かされ、正直なところ、やめておけばいいのに、と思った。巨匠スタンリー・キューブリック監督による『シャイニング』は、原作のスティーブン・キングがあまり気に入っていなかった、といったような逸話はあるものの、それでも映画史に残る名作であった。それの続編を何十年も経って作るということには賛同しかねるなぁと、映画ファンとしては思った。が。実はこの作品、スティーブン・キング自身が書いた続編の映画化なのだ。映画の続編を作ろうということではなく、続編を映画化したということなのである。原作から大きく改変されてしまっていた前作よりも、本作のほうがキング自身は気に入っているというような話も聞こえてきている。
前作はいまさら説明する必要もないぐらい有名な作品だ。もし未見の人がいたらぜひこの機会に見てほしい。なぜこんなに怖いのか、と思うほど怖い。少しずつ狂っていく主人公が本当に恐ろしい。そういう作品であった。本作は前作の主人公だった男の息子、前作ではその狂った父に殺されそうになったダニー少年が主人公である。前作から40年後の世界だそうだ。この少年はちょっとしたテレパシーが使えたり、未来予知ができたりするいわゆる超能力っぽいものを持っていた。それを前作では「シャイニング」と呼んでいてタイトルにもなっているのだが、『シャイニング』が超能力を描いた映画だったのか、というとおそらく誰もそんなことは思うまい。タイトルにまでなっているけれど、そのシャイニング自体のことは前作の中心にはなかった。そこが原作から逸脱しているということでもあった。
本作はそれを改めたのか、シャイニングと呼ばれるある種の超能力のようなものが主軸になっている。そのため前作のような静かな狂気のホラーではなく、超能力を持ったもの同士が戦う、というような形の映画になっている。ジャンルとしてはやはりホラーに分類されると思うけれど、前作と本作が同じカテゴリなのかというとやはり少々違うと思う。そしてその分、原作に近づいているとも言える。
本作はこれ単体としては面白い。異能のものたちが繰り広げるサイキックバトル。ファンタジーの世界に近いものだ。恐怖演出も満載で、そういう意味ではホラーでもある。しかし『シャイニング』の続編と言われて期待するものとは違うのではないかと感じた。同時に、もしかしたらこれこそ『シャイニング』が本来描くべきだったのはこういう世界だったのではないか、という気もする。