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日本では劇団四季のミュージカルとして有名な『キャッツ』。もとはロンドンで生まれたミュージカルで本作はその映画化。日本公開前に聞こえてきたのは「あまりにもひどい評判でかえって見たくなる」ようなものだった。
デジタル技術で作られた猫たちの姿に否定的な意見が集まっていたようだけれど、不気味だというのはわからなくもないが、ダンスを美しく見せるのに一役買っている。そう酷くもないのではないか、と肯定的な気分で見ていた。だがちょっと待て。「酷くない」というのは果たして肯定なのか。
改めてフラットな気持ちで見直してみよう。序盤から観客の置いてきぼり感は強い。『キャッツ』のナンバーが次々に繰り出され、場面がポンポンと転換してそれぞれの猫を描く。楽曲も猫も知らなかったらまるでついていけないかもしれない。四季版では震えるほど興奮するスキンブルシャンクスのシーンは微妙なことになっているし、ミストフェリーズは弱々しく描かれていて魔法のターンもない。見た目の不気味さが気にならなくても退屈感は否めない。
言われているほど悪くはないが、初見の人が見る映画としては少々退屈かもしれない。そして何より、劇団四季版の方がはるかに良い。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
今は良くも悪くも、映画が公開される前にその映画の評判を聞いてしまうことが多い。この作品は海外で先に公開されていたのでなおさら、見る前に多くの評判を聞くことになった。僕は普段、なるべくその映画について知らないまま映画館へ行きたいので、自分から未見の映画の評判を探すということはしない。しかし『キャッツ』については、こちらから調べなくてもどんどん漏れ聞こえてきた。つまりそれほどまでに話題になったということなのだ。そしてその話題というのが、大半酷評であった。10点満点で0点とかいう評価ばかりなのだ。主に視覚効果の部分で嫌悪を示している人が多い印象だった。
このぐらい評判が悪いとかえって見たくなるもので、どんなに酷いのだろう、と半ば変な方向に期待して見に行った。
もっとも批判されていた猫たちの見た目については、それほど気持ち悪いとは思わなかった。メイク+全身タイツのミュージカル版の方が良いという意見もあったけれど、僕はどちらでもそう大きな差はないように感じる。『キャッツ』には見どころがいくつもあるけれど、そのうちの一つは、猫のしなやかな体を表現するようなダンスである。そのダンスで体の美しさを見せるのに、ミュージカル版の全身タイツやこの映画版のように体のラインを見せる風貌が必要になる。アプローチが違うだけで目的地は同じで、どちらもその目的は達しているように思う。
言うほど悪くない。それほど気持ち悪いとは感じない。しかし『キャッツ』としてこれで良いのか、と言われると物足りなくはある。『キャッツ』はエキサイティングで楽しくてちょい悪でマジカルで哀しくて幸せな、夢のようなミュージカルだ。その映画版として本作は一言でいえば「退屈」だ。確かに映画でしか表現できないような部分はある。例えばジェニエニドッツのシーンでジェニおばさんがゴキブリを食うところ。ゴキブリの隊列は映画ならではだし、猫もゴキブリも人が演じるとなれば、舞台でやれば大きさの関係に不都合が生じる。映画だとこういうことは表現しやすい。なのに逆に、舞台で表現されている「人間界を猫の視点で見る」というスケール感は、この映画版には全くない。もちろん大きさの比率は考えて描かれてはいるけれど、それが「猫の視点」を感じさせるようなものになっていないのだ。
言うほどは悪くない。でもちっとも良くはない。
最後に余談だが、海外のレビューに「It’s “Battlefield Earth” with whiskers.(これはヒゲつきの「バトルフィールドアース」だ)」という言葉があった。そんなことを言われたらもう、見るしかない。