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このコーナー初の4DX上映作品の紹介となった。この作品もともとは30年も前のアニメーション作品であり、4DX用に作られたものではない。最近このような、旧作を4DX化して上映する、というスタイルが増えている。この作品、個人的に大好きな作品で、DVDで文字通りもう何十回も見ている。セリフの一つ一つまで身体にしみこんだような作品でありながら、4DXになったものは全く別次元の体験だった。4DXというとシートが動いたり煙や水が出たり、と、どうもこけおどし感があるかもしれないけれど、モーションシートは想像を超えてリアルな「振動」をくれる。特に臨場感をくれるのは風であった。シーンが切り替わったときにふわりと頬を撫でる風。これが劇場という閉ざされた空間にいることを忘れさせる。
本作で最も印象的だったのはサブコントロールを目指すアルフォンスのシーン。屋上へ向かうエレベータにぽつりぽつりと雨が落ちる。闇に吸い込まれるエレベータシャフトを見上げる野明の緊張がヒリヒリと伝わってくる。30年間見続けてきた作品をぜんぜん違う体験として再体験できる。
4DXシアターが地元にあるという幸運をぜひ味わってほしい。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
新造4DX作品ではあるものの、映像自体は旧作であり、ネタバレもなにもない。ここでは4DXという体験について少し触れてみたいと思う。
4DX、すでに体験されたであろうか。体験するとしないとでは4DXに対して持つ印象が大きく異なるのではないかと思う。椅子が動く、煙や水が出る、フラッシュが、風が。どうも派手な効果で映画をにぎやかすもの、というイメージがあるかもしれない。たしかにそういう方向の作品もある。でもこの作品の中に出てくるセリフではないけれど、どんなにすごい技術であっても結局は使うものの知恵による。この作品の4DX上映を見て、4DXシアターの底力を知った。
モーションシート(いわゆる動く椅子)は、想像を超えて細かい体験を提供してくれる。もちろん大きく揺れるといったこともできるのだけれど、シートに埋め込まれた細かいモーターが多種多様な振動を産み出す。エレベータに乗っている、ヘリコプターに乗っている、トレーラーに乗っている。それぞれ違う振動を身体が受け取る。シーンが切り替わったときに、この考え抜かれた振動が提供されると、目から受け取った映像が一気に「体験」になる。それはなにも派手なシーンに限らないのだ。
フラッシュなんてどう使ってもにぎやかしにしかならないのではないかと、思っていた。でももう冒頭、プロローグのエピソードですでに、こういう風に使うのか、とわかる。4DXってなんだよ四次元か、と思ったりしたこともあるけれど、これは四次元ではないにしろ、別次元の映像体験であることは間違いない。
水はさすがにこけおどし感が強い要素ではあったけれど、本紙にも書いたように、雨の細かい表現は大変なリアリティをくれた。
この、30年に渡って何十回となく見続けてきた作品の4DX化を体験したことで、4DXシアターというのはかなり細かく考えて作られていたのだということを知った。モーションシートを始め、風や水の機能は、思った以上に細かい表現ができるようだった。風のシーンで風が吹く、といった単純なことではなく、風の吹き方でシーンを演出できるのである。これは何百本も映画を見てきて、新しい体験だった。
テレビが大画面化し、ホームシアターは低価格化した。3D作品も自宅で見られる。これからの映画館体験は次第に4DX化していくのではないかという気もした。そうなればシアター自体の表現力も向上するだろうし、映画の楽しみ方がより広がるような気がする。
まだまだ数の少ない4DXシアター。それがすぐ行けるところにあるというのはけっこうな幸運だ。このところ旧作の4DX化が盛んなので、未体験の人はぜひ、お好きな作品4DX体験をしてみてほしい。