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- ⓒHAYABUSA2 ~REBORN製作委員会
小惑星探査機はやぶさ。その一号機についての物語はいくつかの映像作品になり、その一つをこのシネマの時間でもご紹介した記憶がある。ちょうど今、この記事が公開された直後の12月6日に、はやぶさ2が地球近傍に戻ってくる予定だ。本作のタイトルを見たとき、以前のような映像作品の二号機版であろうと想像したのだけれど、そうではなかった。この作品ははやぶさとはやぶさ2の二つのプロジェクトを、探査機本体だけに集中して描いている。宇宙へと旅立つ探査機と、それに語り掛けるようなナレーションだけで構成されていて、以前の作品のように携わった研究者たちのエピソードには全く触れられない。そのためドキュメンタリー作品というよりも、より低年齢層向けの教育映像的な側面が強いと感じた。実際、わたしはこの作品を小学生の息子を伴って見に行ったのだけれど、彼はとても面白かったと話していた。
はやぶさ2がこの映画に描かれたような成果を地球へ送り届けることができたら、生命の起源に関する研究が大きく前進するはずだ。
この作品はぜひ、未来の科学を担う子どもたちに見てほしい。途方もない労力をかけて一歩ずつ前進する学問の尊さを知るきっかけになるだろう。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
公にニュースになりながら進行している宇宙開発プロジェクトを子どもにもわかるような形で解説した映像作品である。そのためこの作品にはネタバレという感覚はない。はやぶさとはやぶさ2。二つの小惑星探査機がいったいどのようなミッションを遂行したのか、その経緯がごく簡単に描かれている。以前の、はやぶさ一号機のときにはいくつかの映画がつくられ、いずれも研究者にフォーカスして、研究の裏話やミッション中のトラブル、その対応などを地球にいる人間の側を軸にして描いていた。そのためプロジェクトX的なドキュメンタリー性が強く出たものとして見応えがあった。対して本作には、人間は登場しない。探査機本体を「きみ」と呼び掛けるようなナレーションと、はやぶさ、はやぶさ2を描いたコンピュータグラフィックスのみでできている。ごく一部、実際に撮影された映像が使われた部分もあるけれど、大部分はCGだ。
そのせいもあり、この作品の印象は「教育用のコンテンツ」というものである。以前の作品のようなプロジェクトX的ドキュメンタリーを期待してしまうと肩透かしを食うことになる。逆に、ぜひお子さんを連れて見に行ってほしい。小学校低学年でも十分にわかるような内容で作られている。子どもにもわかる言葉でナレーションがされ、「きみ」と称されて擬人化された探査機が遠い宇宙空間で奮闘している様が描かれる。はやぶさという探査機がいったい何をしたのか、はやぶさの持ち帰った成果がどんな研究に役立つのか、といったことがごく簡単に説明され、全容がなんとなく把握できるようになっている。
そういった内容なのでこの分野に興味のある大人が見ても物足りない内容で、もっと研究の裏話を聞きたい、といった声は上がるであろう。
はやぶさは予定通りに進行すれば12月6日に地球近傍へ戻り、小惑星リュウグウで採取したサンプルのカプセルを地球へ投下する。この原稿の執筆時点ではまだ未来の話だ。いずれにしても天文方面での大ニュースになるだろう。
本作を見る限り、はやぶさ2のミッションは大成功と言ってよさそうだ。目的のサンプルはしっかり回収できている見込みが高く、これが無事に回収できれば生命の起源に関する研究が大きく前進することになるだろう。世界中の研究者が注目しているはずだ。
何もかもがけた違いになる宇宙開発の片鱗を感じ、大変な時間と労力をかけてわずかなサンプルを得る。それによって自らの起源を知ろうとする人類。その飽くなき探求心や学問の尊さ、科学の深さをぜひ、未来を担う子どもたちに感じてほしい。この映画を見て天文学、宇宙物理学などに興味を持つ小学生が現れることがまた人類の新たな叡智につながるだろう。