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- ⓒ2021「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 ⓒTomoko Yamashita/libre
悪意とはなんだろう。心の闇とはどんなものだろう。
霊のようなものを見ることができる主人公が、ある時除霊を生業としている不思議な人物と出会う。見る男と祓う男の異能力バディものだが、底に流れているのはごく普通の人々が心の内に抱えている悪であり、闇だ。その「穢れ」を集めて呪いをかける少女まで登場し、警察との関係も描きながら、日常のすぐそばにある異能の世界を見せる。
風変わりな人物によるバディものとして魅力的なのだが、見終えてどうもすっきりとしない。無自覚に振り回される正義によって被害者が生まれ、被害者の内に芽生えた闇はやがて被害者を加害者に変える。その現代的なテーマを異能バトルの世界で描いていることにはとても魅力があるのだけれど、被害者が加害化したものに対して、多少酌量の余地はあれど、やはり全部チャラというわけにはいかないのではないか。その加害者による被害者だって出ているのだから。この作品はそのデリケートな問題をうやむやなままに、座りのいい美談にしてしまっているように見える。
キャスト陣では志尊淳が弱い人物を演じているのが新鮮だが、岡田将生と平手友梨奈はいつもの通り。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
霊が見えてしまい、それを恐れて怯えながら生きている主人公。あるとき、除霊を生業としている人物と出会、彼の目となって共に働くことになる。見るものと祓うもののコンビが活躍するバディもの、というような感覚の作品だ。この「祓う」方の人物がだいぶ普通ではなく、いわゆるキャラが立っている。二人で除霊を始める辺りは面白く、そこに「霊」などはまったく信じないという警察官が現れて物語は広がりを見せる。序盤の期待感は素晴らしい。
異能の二人と「信じない」警察官。三人の前に平手友梨奈扮する呪いを操る女子高生が現れる。彼女は一見してわかるほどの強力な能力者で、ド迫力だ。主要キャラクタが揃い、とてもワクワクする。
ところが、である。ここからが謎だ。これだけのお膳立てが整いながら、除霊師も呪いの女子高生も幼いころの出来事から心に闇を抱え、言わばダークサイドに堕ちてしまっているということが判明する。であれば、その原因となった悪の根源を新たな敵に据えて戦えば良さそうなものなのだが、そうもならない。どうやら黒幕はこいつらしい、という人物は登場するも、それと戦うことにはならず、言わば敵の武器を解体するようなことで一件落着と相成る。
何一つ落着していない。呪いの女子高生の罪は問われないのか。たしかに呪いなどというものを法律で裁けないが、だからと言ってそのままお咎めなしでいいのかというのは気になる。しかも悪の根源でありそうな男は結局ほとんど登場しないまま終わってしまうのだ。
こういう長い原作の序盤だけを映画化する場合に、このような悪の親玉をどうやって描くのかというのは難しい問題だが、一戦交えて退ける、ぐらいのことはあっても良かったのではないか。中盤からの展開に疑問が多く、前半のワクワクが全部しぼんでしまった印象だった。