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俳優たちが自主制作で映画を作ろうとする、まさに映画好きのための映画。この作品はテレビドラマを受けての劇場版であるけれども、過去の作品を知らなくても十分楽しめる。シリーズを通して本作にも数多くのパロディが盛り込まれているが、それも元ネタを知らなくても楽しめる。
本作は少し風変りな作品で、俳優たちはほとんどが本人の役として出演している。つまりテレビの番組制作や映画制作の舞台裏を、俳優たちの視点で描いたメタ・フィクションならぬメタ映画なのだ。
特に本作は100人の俳優で映画を作る、という話で、本当にそのぐらいの人数が登場する。あの人もこの人もいる。豪華俳優陣といった言葉は月並みだけれど、この作品のそれはちょっとレベルが違う。主役級の顔ぶれだけでもとんでもないのに、劇中劇としていくつものドラマが登場し、それぞれに豪華な出演者がいる。ほんとうに、よくこんな作品が実現したものだと思う。
日本の映画シーンに訪れつつある変革と、それが連れてくる変わりゆくものへの哀愁と期待のないまぜになった空気。変わらずにそこにある映画を愛す人々の姿。この映画にはまさに、シネマの時間が流れているのだ。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
普段私は、映画は結構見るけれどテレビはほとんど見ない。そのため、この作品の過去のシリーズは見たことがなかった。今回映画版で初めて体験した。
この作品は富士山の近くにあるという撮影所を舞台にした物語だ。そこの所長という人が伏せられていて、「所長」という呼称でのみ登場し、姿が登場しない。私はこの所長の正体をラストシーンで初めて知ることになったのだけれど、過去のシリーズを見ている人であればすぐに気づくのだろう。
シリーズものの劇場版だが過去作を知らなくても十分に楽しめた。むしろ冒頭のシーンなどは、知らないがゆえに驚きが大きく、かえって楽しめたぐらいかもしれない。ちりばめられたパロディの数々は正直なところテレビドラマをほとんど見ない私にはわからなかったけれど、どこかで見たような絵てこんな雰囲気の作品があったはず、という程度にはわかり、それで十分楽しめる。
バイプレイヤーというのは脇役のことだそうで、その名の通り、この作品には脇で光る俳優が大勢登場する。普段から主役級の人ほどこの作品では脇役で、いろいろな映画で重要な脇役を演じてきた人たちがここでは主役だ。でも本作を見ればわかるように、もはや主役も脇役もない。劇中劇がいくつも登場し、そのそれぞれにも主役がいれば脇役もいる。劇中劇の主役が全体としては脇だったりもするし、逆もまた然り。劇中劇は俳優自身にとっても複雑なもので、芝居をしている芝居と、芝居をしていない芝居が混在することになる。このような難しい芝居をごく自然に演じ切っている俳優たち。シリアスとコメディも絶妙なバランスでせめぎ合っていて、主役も脇役もなくどの役柄も難しい。大変なものを見たのではないかという気がしてくる。
どういうカラクリでこれほどの出演者を集めることが可能だったのかと思うが、きっとこれほどの顔ぶれを集めるのは簡単ではなかろう。そうそう見られるものではないという気がする。この作品に出会えたことに感謝したい。