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旭川名物のロータリーから動物園通りに出ると、右手にちらりと見える「神田珈琲園」の文字。レトロな書体と建物からにょきっと生えるような看板の形が印象的だ。隣の床屋さんの赤青白のサインポールが、不思議とヨーロピアンなムードを醸し出している。
5月で44周年を迎える同店は、東京にある神田珈琲園ののれん分け。マスターは19歳の頃から神田のお店で修業し、結婚を機に奥様の地元旭川で開業。こだわりは自家〝直火”焙煎。当時は市内に800店舗ほど喫茶店があるなか、自家焙煎のお店は数えるほどしかなく、珍しかったそうだ。
カウンターに腰掛け、ブレンド(450円)を注文する。こぢんまりとした店内の、年月を重ねた味のある木目調の内装が、懐かしい気持ちにさせてくれる。一杯ずつ丁寧にドリップしたコーヒーは、やはり贅沢なものだ。立ち上る湯気を眺めつつ一口。苦みと酸味のバランスが良く、すっきりと飲みやすい。入口横にある小部屋ではマスターが焙煎の真っ最中で、焼けた豆の香ばしい香りと灰色がかった白い煙が充満している。時刻は午前10時。開店からこの時間までがお店のゴールデンタイムなのかもしれない。朝刊を読みながらモーニングで腹ごしらえ、焙煎機から放たれる魅力的な香りを纏って出かけていく。そんな常連さんたちで朝から賑わっていた。
ムラのないように焼くのがむずかしい直火での焙煎は、経験がものをいう、まさに職人技。「味を決める大事な作業だからね」と、なによりも神経を使う焙煎作業を終えると、マスターもほっと一息つき、常連との会話に頬もゆるんでいた。主役のコーヒーに合うものしか出さないと、メニューはトーストやサンドイッチなどの軽食のみ。ストイックにコーヒーと向き合い、長く常連に愛されるお店だが、最近は若いお客さんも増えているようだ。「豆を買っていく人が増えている印象だね。うちで扱っているのは一級品の中の一級品。本物の珈琲を知ってもらえるのは嬉しい」と笑顔を見せてくれた。
自分で淹れた珈琲でお客さんを喜ばせたい、そんな職人の仕事を間近で体感できる数少ないお店。暖かくなったら今度はアイスコーヒーを飲みにこよう。(文/武山 勝哉)
神田珈琲園
旭川市9条通8丁目右1号
☎0166-26-2016
営/8:00-18:00
休/土日祝