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ピーターラビットと言えばウサギを擬人化した絵本のキャラクタとして有名だ。ウサギ以外にもたくさんの動物たちが登場する。本作はその実写映画版ということになるのだが、動物たちはいずれもかなり「リアル」。擬人化して漫画っぽくなっているのではなく、服を着たりはしているものの、姿や動きなどはかなり本物の動物に近づける方向で作られている。それが二本足で歩いたりしゃべったりするのだけれど、変に人間ぽくはせずに、それぞれの動物たちの特徴を活かして作られている。
今回は作者であるビアが作品をヒットさせるための要素と守るべき世界観の間で揺れる姿を描いている。そして揺れるその方針がそのままこの映画そのものを揺るがし、ピーターと仲間たちは大騒ぎの大冒険を繰り広げることになる。作者が登場して作品世界の中と外を繋ぐこの映画シリーズ。本作はその設定をうまく使って本来のピーターラビットにはあり得ないような物語を繰り出すことに成功している。
本筋に関係ないちょい役として出てくるニワトリが最高に面白い。リアルなニワトリの動きにセリフがマッチしすぎていて大笑い必至だ。
吹き替え版もあるのでぜひお子さんと楽しんでほしい。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
この実写版ピーターラビットシリーズは、単にピーターラビットの世界を映画化したのではなく、作者であるビアが作品のモチーフにしているピーターたちウサギと暮らしている世界を描いている。映画の中で作者のビアがピーターラビットという絵本を描く、という構造になっているのだ。この方法は実に見事で、本作は前作以上にその設定を上手く使っている。
今回、ビアは大手の出版社から声がかかり、ピーターラビットをより大きな市場へと展開することになる。しかしそれにあたり、出版社側は大きく売りたいため、作品にあれこれ注文を付けてくる。途中までビアはそれに沿う形で「ピーターラビット」に大きな変更を加えようとする。キャラクターのデザインを変えたり、カーチェイスやスカイダイビング、はては宇宙空間まで持ち込んだりと、いわゆる「大衆受け」を目指す方向に改変しようとする。
もちろんピーターラビットの世界にカーチェイスを持ち込めばそれはもうピーターラビットではなくなってしまうわけだが、迷走した作者と、その裏で大冒険に巻き込まれていくピーターたちを描いていくことで、クライマックスで本当に派手なアクションを詰め込んでくる。ピーターたちは仲間やビア本人を守るために、スカイダイビングをすることになる。
映画として大衆受けするための派手な要素を入れつつ、それを「ピーターラビット」という作品を守るために使うという方法で両方丸く収めることに成功している。とはいえこの方向でやれることの限界も見えており、この作品は可もなく不可もないという印象で、特に不満もないものの、積極的に見たい要素があるかといえばそれもなく、今後シリーズを継続していく可能性という意味ではあまり明るい未来は感じなかった。