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劇場版 ルパンの娘

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ⓒ横関大/講談社 ⓒ2021「劇場版 ルパンの娘」製作委員会

世界に名だたるルパン。その血族がやたら日本にいるのはどういうわけなんだろうか。それはさておき、ルパンの娘である。この作品は超展開目白押しのコメディであり、話のムチャクチャさを楽しむタイプの作品と言える。泥棒一家の娘と警察一家の息子が結婚し、泥棒と警察が親戚になってしまったという設定。他にも探偵の家系やミュージカル泥棒親子など各所で「血族」を意識した人物配置がされている。どの家系にもそれぞれ個性的な人ばかりおり、それぞれがそれぞれの能力を発揮して機能するスーパーチームを構成している。かなりイカれたアベンジャーズのようだ。

あらゆるエピソードは強引かつ唐突な超展開で進行し、ツッコミどころしかない。もちろんツッコむのは野暮である。ルパンを謳っていても潔すぎるほどにサスペンス的なスリルは一切ない。ただ、アクションシーンには力が入っていて、俳優のスタイルが良くて美しいし、奇想天外なキャラクターによるちょっと珍しい格闘シーンなども目に楽しい。

自粛ムードや暗いニュースによるストレスが溜まりやすい昨今、こういうなにも考えずに楽しめる映画を見るとスカッと気が晴れるかもしれない。(映画ライター・ケン坊)

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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どこまでもデタラメな映画だ。いろんな映画のいろんな要素を詰め込んだ印象で、どのシーンも「これが見せたいんだな」という印象を受ける。逆に言えば『これが見せたいんだな」というシーンばかり集めたような映画で、それを全部突っ込んで成立する話をあとからでっち上げたような物語だ。人物設定は隅々まで一切リアリティがない。もちろんリアリティを求めるような作品ではないのだが、それにしても圧倒的な迫力だ。ストーリーは常に超展開で、思ってもみないような方向へ進む。今回登場する謎の悪役は、もともとは一族の身内だった、ということが判明する。身内だったはずの彼女に不幸な出来事があり、それが彼女を変えてしまって敵対することになってしまった。ここで、「よし、タイムマシンを作って過去へ行き、彼女を変えてしまった出来事を回避しよう」という話になる。なんということだ。SFだったのか。もちろんSFなどではなく、全般にデタラメなのだ。タイムマシンにもそれらしい説明は一切なく、いきなり登場する。デタラメもここまで徹底するとなんだかそこはかとない迫力を生むということがわかる。俳優陣もこのデタラメを目一杯楽しんでいて、画面全体に楽しさがみなぎっている。この辺に、なにもかも捨て去っても楽しいから良いと思える秘訣があるような気がする。

この作品はドラマシリーズの劇場版という位置づけではあるが、過去の作品を一切知らなくても何ら問題はない。必要な前提知識は冒頭で教えてくれるし、そもそも難しさなど一切なく、次々に繰り出されるデタラメをただ楽しめば良いだけだ。久しぶりにこんなにもなにも考えなくて良い作品を見たような気がする。むしろ考えたら負けのような気がする。「考えるな!感じろ!」を体現しているような作品だ。

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