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- ⓒ2021「決戦は日曜日」製作委員会
ある程度力のある代議士が病床に伏したことで、その代わりとして擁立された政治のことなどほとんどわかっていない代議士の娘。本作は二世として議員を目指すことになる何もわかっていない女性とその秘書によるドタバタコメディである。極端な味付けのされている主人公を宮沢りえが怪演していてこれが妙に面白い。基本はデタラメな主人公が選挙戦を戦うコメディなのだが、同時に「なぜ政治は変わらないのか」という政界の澱のような闇も描かれている。利権にまみれた候補者の擁立から地元後援会との繋がり、選挙運動の裏側やスキャンダル、報道まで抱き込んだ裏取引。闇、闇、闇。様々な黒い側面を描きつつ、常識外れな主人公が周囲を振り回しながら驀進する。中盤以降、SNS時代の選挙戦のありそうな話からハチャメチャがエスカレートしていく。ストーリーはぶっ飛びでリアリティこそ薄いものの、それでいてまるっきりあり得ない話にも見えないところがオソロシイ。
まさかこの作品に続編はないだろうが、この主人公が議員になってはたして政治は変わっていくのか、彼女は何かを変えることができるのか、その先の物語も見てみたい。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
政治のことなどまったくわからない人が成り行きで立候補することになってしまい、周囲がそれに振り回されて大変なことになる、というコメディなのだが、そのドタバタの裏でいろいろな闇を暴いている。宮沢りえ扮する二世候補が主人公ではあるが、実態として中心人物はその秘書のほうだ。この秘書は冒頭で父親の代議士とのエピソードが描かれるのだが、それが伏線となり、終盤におけるこの秘書の行動の変化のきっかけになっていく。序盤、型破りな二世候補は選挙での当選を目指して選挙運動をするが、不用意な発言やふるまいによって状況はどんどん悪くなる。ところが中盤、状況が上向いてきたところで今度は当選したくない、落選しようという方向に動き始める。秘書の姿勢が変化し、二人協力して「落選」を目指した活動が始まるのだが、ここからやることなすこと裏目に出て、炎上目当てでやったことが逆に支持率の向上に繋がるなど、ドタバタがエスカレートしていく。このあたりで描かれているエピソードはSNS時代にさもありなんという印象のもので、フィクション的ムチャクチャではあるものの、あながちあり得ない話とも言えない印象を受ける。
地元の基盤を支える後援会は年寄りばかりで構成され、政党の後援側もそれぞれの利権と裏取引にまみれている。政治を良くしたいという志高き若手が出てきたとして、このような有様では政治など変わろうはずもない。本作は底抜けコメディでありながら、そういう政治の閉塞感も描き出している。そしてこのムチャクチャ女性議員とその秘書は、この選挙での当選の後、何かを変えてくれそうな気配を感じさせてくれる。作品の性質上この映画には続編は無かろうと思うが、彼らのその先の物語はちょっと見てみたい気がする。