内容のー部もしくは全部が変更されてる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
大正7年に開設した旭川で最も古い「第一市場」をはじめ、古くから市民の台所として親しまれてきた15丁目の銀座商店街。鳥居や灯籠をモチーフにしたオブジェが並ぶ、まるで参道のような仲見世通りから脇に入ると見える、「銀」の文字。2カ月に1回の商店街広告の打ち合わせの最中、ずっと気になっていたお店だ。外からは、曇りガラスの扉の向こうは見えない。だからこそ好奇心をくすぐるのだ。
入口すぐのカウンターに腰を掛ける。店内を見渡すと、奥のソファには愛らしいフクロウたちが並んでいた。メニューをざっと見ていると、オムライス(700円・スープ付)と目が合った気がした。店内にはテレビの音だけが流れている。水を一口飲んでから、小さな声で注文した。
ママが19歳の頃にオープンしたお店は、今年で55年。昼は喫茶、夜はスナックと、昔は買い物帰りのお客さんや近所の店の人たちで一日中賑わっていたそう。向かいにはキャバレーがあり、出勤前の女性たちが化粧をしながらコーヒーを飲むのがお決まりのコースだった。「15丁目は危ない場所だから近づくんじゃないよ、と親によく言われたの」とママ。今ではそんな面影はなく、ゆっくりと静かな時間が流れている。そうこうしているうちにオムライスが完成した。ケチャップライスの上に薄焼きの卵を乗せたシンプルなスタイル。ところどころ半熟なのがたまらない。真っ赤な福神漬けが、個人的にはドストライクだ。いただきますと一口。素朴な卵とちょっと濃いめの味つけ、時折現れるグリーンピースに、どことなく懐かしさを感じた。
旭川に生まれて30年。いまひとつピンと来ないが、確かにあったド派手な時代。昭和を生き抜いた喫茶店を通して、もっと町の歴史に触れていきたいと思った。(文/武山 勝哉)