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- ⓒ2022 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
なにかと話題になるハロウィンの渋谷を舞台に、過去と現在をつなぐ爆弾魔事件を追う。なるほどこのスケールのものを実写でやるのは難しいだろうけれど、アニメなら可能だ。実は私、コナンをちゃんと見たことがなかった。基本的なキャラクタについてもほとんど知らない状態ではたしてついていけるのか不安だったのだが、オープニングでコナン君自ら主要メンバーの関係について説明してくれた。本作で初めてコナンを見る人もちゃんとついていけるようになっていた。これほどの長寿作品でこんな風に初見さん向けの配慮をしてくれてるのは珍しく、本当にありがたかった。
本作はスケールの大きな話を短い時間でやるのでいささか目まぐるしい部分もあるが、逆に言えばとてもテンポが良く、ダレることなく終わりまで引っ張ってくれる。物語はキャラクタの存在から登場するギミックに至るまで何もかも現実離れしているため、探偵ものとして事件を追う体裁にはなっているもののサスペンス的なスリルはなく、ツッコミどころも多い。リアリティを求めてしまうとあちこち気になってしまうので、あくまで娯楽アニメとしてあっけらかんと楽しむ作品だと感じた。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
あまり細部をつつくようなタイプの作品ではないとは思うのだが、少々気になることはいくつかある。特に一番モノ申したいのはサブタイトルだ。「ハロウィンの花嫁」とある。このサブタイトルのせいで嫌でも「ハロウィンの花嫁」に注目せざるを得ない。ところがこの花嫁はあまり目立つ描き方がされない。花嫁が本作のヒロインなのであればこのサブタイトルで納得なのだが、サブタイトルになっているのに序盤ひたすら影の薄い存在として描かれる。それでかえってピンと来てしまうのだ。結果、このサブタイトルが重大なネタバレになってしまうのである。終盤で花嫁の正体が明らかになったとき、「そりゃそうだよね」と思うわけだ。もう少し違うサブタイトルであればこの花嫁にはあまり注目せず、本編の演出通りにミスリードして終盤のカタルシスにつながったような気がする。
もう一つ気になるのはクライマックスの爆弾である。町ごと爆弾化する超スケールの話になるわけだが、果たして二液混合型の爆弾というのは、一部分が混ざり合っただけで混ざり合っていない他の部分も爆発するのだろうか。おそらく本作ではこのクライマックスの爆弾を演出するために二液混合型の爆弾を採用しているのだと思うが、それがどのような原理で爆発するのかという説明はないため、あの状況で実際に液体が混ざった際、どのような事態が起こるのかうまく想像できなかった。そのあとの、爆発を阻止する部分も少々強引な話で、犯人とのスリリングな攻防の直後なだけに若干興ざめ感もあった。二液混合型というと『ダイ・ハード3』を思い出す(というよりそれ以外思い出せない)のだが、物語として使うには少々扱いが難しい物かもしれない。
もともとこの作品はSFではなくいわゆる探偵マンガであるため、漫画的展開になるのは問題ない。ただ、あまりになんでもありにしてしまうと探偵と一緒に事件を追う楽しさがスポイルされてしまうような気がするのだがどうなのだろうか。