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- ⓒ原泰久/集英社 ⓒ2022 映画「キングダム」製作委員会
古代中国史を背景にした壮大な作品。過去に何度も映像化されてきた作品の、本作は実写映画二作目にあたる。本作において主人公らの秦(しん)は隣国である魏(ぎ)の大軍に攻め込まれ、数量に劣る戦力でこれを迎え撃つ。知略に富んだ指揮官の率いる魏の大軍を前に、秦の大将軍ひょう公(ひょうこう)はどう戦うのか。本作はその物語をひょう公軍の末端に歩兵として参加する主人公の視点を中心に描く。
戦乱の物語は、多くが武将、ここで言えば将軍級の戦略を見せる物語になりがちだ。だが本作は主人公が末端の歩兵であることで、広い視点で楽しめる。もちろんフィクションなのでありそうもない話も満載なのだが、異端の火種が大局を左右するという物語は痛快でとても面白い。
キャスティングが見事で、王騎(おうき)を演じる大沢たかおが圧倒的な個性を発揮していたり、今作から登場する羌かい(きょうかい)をアクションを得意とする清野菜名が演じ、華麗な立ち回りで一騎当千の活躍を見せたりと、芝居の面でも見どころが満載だ。大きく戦局が動くきっかけとなった一戦をぜひ堪能してほしい。なお、キングダムシリーズをまったく見たことが無いという人でも十分楽しめると思う。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
知略に富む魏の呉慶と、本能で動く秦のひょう公。まったくタイプの異なる二人の名将の戦いが本作の要になっている。演出上、呉慶は圧倒的な武将として恐れられている様子が描かれ、これを迎え撃つひょう公は自軍を見捨てるような采配を揮うなど、「この将軍は大丈夫なのか」と不安に思わせるような見せ方がされる。最終的にひょう公の戦略は最小限の犠牲で最大の戦果を上げることにつながるわけだが、本作はそれを前線の歩兵の視点で描いていくため、戦争というのがどういうものなのかが色濃く浮かび上がってくる。
乱世を描く物語は名将の活躍を描きがちで、戦略で戦局を左右し、結果を出すという物語になることが多い。武将が動き、戦果が上がり、パワーバランスが変化する。勝つか負けるか。優勢か劣勢か。そういった状況にはしかし、常に前線というものが存在する。前線では実際に敵と切り結び、血を流し、命を落とすものが大勢いる。その犠牲の元に戦果があり、戦局もある。『キングダム』という作品は主人公を末端の歩兵に設定しつつ、彼に王と繋がりを持たせることで、上層の動きと末端の現実を同時並行的に見せていくのが新鮮だ。
中国史をベースにしつつ史実からは大胆に逸脱して物語が展開されているのだが、人物の造詣などはそれぞれ魅力的で、スケールの大きなエンターテイメントとして長く楽しめる作品だと思う。エンドロールの後に次回作の予告があったが、次も見逃せないものになりそうだ。