昭和喫茶探訪 23
カレーの匂いと福神漬けのせい
蘇る記憶は、あたたかな春
喫茶クイーン
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普段あまり行かない場所に行くと、ついつい喫茶店を探してしまう。どこに行っても、ちょっと一息つける場所がほしいのだ。打合せからの帰り道、住宅街を走らせていると薄紫色の看板が目に留まった。時代を感じるフォントと高貴な店名。そういえば、ここは学生時代に毎日のように通っていた場所だ。朧げな記憶が蘇る。あの頃は、いつも横目で気になりつつも、入ることはなかった。時は流れ、今はカフェよりも喫茶店。こういうお店の方が居心地がいい。加齢によるものなのか、ノスタルジーがそうさせるのか。
永山駅前で10年、今の場所に移ってからは30年以上になると、ママは気さくに話してくれた。ランチメニューもあり、おすすめは手作りのカレーとのこと。ならばと、カツカレーを注文した。カウンターでは、常連さんがコーヒーを飲みながら昔話に花を咲かせていた。まぶしく穏やかな陽気が、窓の外から降り注いでいる。どこからともなくカレーのいい匂いがする。嫌なことも楽しいことも、すぐに忘れられる自分の性格は嫌いじゃない。ただ、そのせいで昔話もつぼみのまま終わってしまうことが多い。そんな僕が、唯一覚えているおふくろの味が、カレーだ。正直、具材や味などの細かいディテールは覚えていない。ただ、好きだったなあという感情と、分厚いテレビの画面、その日の匂いだけが記憶のどこかに今も残る。赤い福神漬けが乗った家庭的なママのカレーに、なつかしさの果てまで連れていかれた。
右ポケットでは携帯が鳴る。時刻は午後3時半。仕事はまだ終わっておらず、締切間近。お会計を済ませて外に出ると、コートがいらないほどあたたかかった。郷愁にふけるのもほどほどに、また春に向かってじたばたやっていこうじゃないか。
関連スポット
永山の老舗喫茶店
住所:旭川市永山4条15丁目5-11TEL:0166-48-3900/定休日:日曜日/駐車場:あり
永山町/カフェ・喫茶
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