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- ⓒ石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会
勘違いする人は少ないと思うが念のために書いておくと、日曜日にやっているいわゆる子ども向けの仮面ライダーとは全く違うものなので、今仮面ライダーを見ているような子どもを連れて行ってはいけない。これは本来仮面ライダーとはどういう物語であったのかを新解釈で現代的にアレンジした作品であり、映倫でもPG12という指定がされている。くれぐれも小さい子どもに見せないように注意していただきたい。
古くから仮面ライダーはショッカーの戦闘員をパンチやキックの一撃で倒してきた。それはいったいどういう力なのか、当時子どもとして見ていた人たちは私も含め、あまり深く考えていなかった。それを本作はリアルに見せる。仮面ライダーのパンチとは、キックとは、どういうものなのか。非人道的な生体兵器となったライダーの悲哀に向き合い、さらにショッカーの目論見についても掘り下げがされている大人向けの作品なのである。
幸せとはいったいなにか。誰もが幸せのために行動し、対立し、それぞれの理想のために戦っている。僕らは現代に蘇った仮面ライダーを目の当たりにし、この作品の描いた哀しみは今なお深く響くことを確認するのである。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
庵野監督による仮面ライダー。シン・ウルトラマンもそうだが、本作も単なるリメイクではない。50年も前の子ども向け特撮作品を現代に合わせてリファインし、さらに、現実と地続きの出来事のように描く、というある種の新解釈版と言える。時代性のアップデートが見事で、ちゃんと現代を舞台にした話になっている。それでいて原作にあったテーマの重要な部分をしっかり継承し、さらに、子ども向けではないという位置づけにすることで可能になる表現を持ち込んで、重みをもって描いている。これにより、原作が本来見せたかったのはこういうテーマだったのではないかと思わせる、まさに「真の」仮面ライダーなのではないかと感じさせる出来栄えだ。
全体的に俳優たちのセリフの話し方がぎこちない。全体的なので半ば意図的にやっているのだと思うが、これが妙な引っ掛かりに感じられる。自然に話す人物がおらず、全体的に硬い演技なのだ。特にヒロインはかなり舌足らずな話し方をするので気になる。全体的に芝居が固いのも経験の浅い俳優で構成されがちな本来の仮面ライダーに寄せているのかもしれない。この引っ掛かりが作品のリアリティを見せつつ非現実的な世界観を引き立てているのかもしれない。
ショッカーの親玉は斬新な解釈でアップデートされていて、人類を幸せに導こうとする人工知能である、ということになっている。登場人物の名前は初代仮面ライダーから継承されているが、それぞれのキャラクター設定は少しずつ異なっている。
ビジュアル的にはいつもの庵野監督の絵で、各所に既視感のある絵が登場する。庵野監督はずっと一貫して見せたい絵というのがあってそれを見せ続けているが、本作は特に、エヴァンゲリオンなどで描かれたレイアウトそのままの絵がいくつも登場する。庵野監督の作家性と原作のテーマが相乗効果を発揮し、とてつもない力を持った映画として現代に蘇ったと言えそうだ。