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新年度が始まった。気持ちを新たに、それぞれに忙しい日々を送っているであろう今日この頃。ご多分に漏れず、自分の予定も隙間なく埋まっている。スケジュールを見るたびに、将来の時間を前借りしているような、毎日が早送りで進んでいるような、充足感と閉塞感の狭間のような、なんともいえない気持ちになる。これがうれしい悲鳴というやつなのか。
隙間の時間とわずかな小銭をかき集め、気になっていた店にようやく来ることができた。赤い看板とひさしが呼んでいる。リピーターが多いという手作りのわかめごはんセット(630円)と、ネルドリップで淹れるコーヒー(食後は240円)を一緒に注文。単品でも390円と財布にも優しい。今日はちょっとだけ自分を労わってあげようと思う。じゃこや人参が入ったごはんと、具だくさんの味噌汁が、夕方の身体にじんわり沁みていく。
創業47年目を迎えるこの店は、奥がギャラリースペースとなっている。向かいに画材屋さんがあることが、ギャラリーを作ったきっかけとママが教えてくれた。絵画や写真、版画など、様々なジャンルの表現に触れることができる。誰かのフィルターを通して見る世界は、十人十色でどれも興味深い。あたたかいコーヒーを片手に、とめどなく流れていく時間をせき止めるかのように、じっと作品を眺めた。時間を忘れてしまうのも、仕方がないだろう。
食後に飲んだコーヒーのカップは、思いのほか軽かった。なんでも、同級生の窯元に創ってもらった、ママこだわりの品だという。なんだか、気持ちまで軽くなった気がするのは、多分気のせいではないはず。頭を空っぽにして、たゆたう時を過ごすことが、今の自分には必要だったんだろう。そう言い聞かせながら、ぬるくなったコーヒーを飲み干した。(文/武山 勝哉)
ギャラリー喫茶ルル
住所/旭川市6条通8丁目右5
TEL/0166-22-7911
営業時間/8:00-18:00 ※土曜は14:00まで
定休日/日曜・祝日