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DCコミック系のヒーロー映画は「DCエクステンデッド・ユニバース」と称し、ジャスティスリーグを中心に様々な作品のキャラクタが同じ世界にいるという「ユニバース」を形成していた。が、ここへきてDCもマルチバースの波に飲まれる。本作はその混乱の最初の作品になるだろう。
ザ・フラッシュはものすごい速さで動くことによって常識を超えたことをやってのけるスーパーヒーローだが、その特性上映像としてとても面白い。世界がスーパースローになっている間にいろんなことをする。本作ではスピードが速すぎて光速を超えてしまい、時間遡行できるようになる。この作品はDCの世界にマルチバースをもたらす重要なストーリーの基点であり、フラッシュというキャラクタを主人公にした初めての作品であるが、同時に古くからのDC映画ファンにはたまらない小ネタを満載したマニア垂涎の作品にもなっている。あなたはかつてスーパーマンやバットマンを演じた俳優をご存じだろうか。また、かつてスーパーマンやバットマンを演じると噂されながら実現しなかった俳優をご存じだろうか。答えがYesであれば、この映画の細部にきっとあなたは唸るはず。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
なんでもかんでもマルチバース化してきた気配が否めない。あっちもこっちもマルチバース。マルチバースはタイムパラドクスの問題を解消したというか、力技でねじ伏せた。マルチバースという考え方を持ち込めばタイムパラドクスはもはや考える必要がなく、なんでもありだ。本作で面白いのは、過去に戻ったフラッシュが過去のバットマン(なんとマイケル・キートン)に出会った際、過去のバットマンが説明するマルチバースの説明である。過去のバットマンはスパゲティをゆでながらマルチバースの説明をするのだが、これがこの上なくわかりやすい。マルチバースは多元宇宙であるが、それがいったいどういうものなのかこの説明を聞くとすっきり理解できるだろう。つまりはどんなムチャクチャな話でも「アリ」になる魔法の設定なのである。
本作はその「なんでもあり」を最大限に活用し、映画の外の、僕らが今暮らしているこの世界の可能性としてあり得たかもしれない世界を描き出す。ニコラス・ケイジがスーパーマンを演じている世界。エリック・ストルツがバック・トゥ・ザ・フューチャーのマーティを演じている世界。映画のフィールドにはいろいろな逸話がつきものだが、それらをマルチバースとして具現化するというのは熱いし、きっと作り手の中にも生粋の映画マニアみたいな人がいるのだろう。
細部にいろいろと楽しめる小ネタが満載ではあるものの、主軸の話はムチャクチャである。やはりフラッシュというキャラクタは単独で作品にするのが難しく、全編にわたりバットマンの存在感が大きい。本作ではベン・アフレックのバットマンからマイケル・キートンのバットマンにバトンタッチするという熱い要素があってファン垂涎ではあるが、やはり「ザ・フラッシュ」という映画なのにバットマンの主役感が大きすぎる気はする。それにヒーロー感という意味でも途中合流するカーラ(スーパーマンことカル=エルのいとこ?)のかっこよさが際立ち、フラッシュは派手さに欠ける。序盤のシーンでフラッシュ自身が「僕ってジャスティスリーグの雑用係だよね」と愚痴るシーンがあるのだが、これがあまりに真実で笑えない。
マーベルのシネマティックユニバースもそうだが、一人一人が主役であるはずのヒーローを一堂に集めるのは「胸熱」ではあるものの、物語を成立させるのが非常に難しいという印象はぬぐえない。