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内容のー部もしくは全部が変更されてる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
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毎年この時期に開催されるお祭りが、夏の始まりを知らせる。若者がたくさんいる会場では、縁日の明かりに照らされた青春がまぶしく映る。暗い話題ばかりが目に付く昨今。将来に不安を抱えながらも、流れていく時間に抗うように、友人や恋人との今を楽しんでいるのだろう。始まってしまうと、あとは終わるだけなのが切ない。
30歳手前ぐらいからか、友人との遊びがお酒を飲むことに変わっていった。安い大衆居酒屋で、味わうでもなく流し込むように、お酒と一緒に愚痴と言い訳を飲み込んだ。久しぶりの会話も、ゆるんだ口元からは昔の話ばかり。前に進むこともなく、ただただ頭の中をアルコールがぐるぐるとめぐる。2日酔いの朝、仕事の話しかしてないじゃん、との言葉だけが耳に残った。
からっと晴れたある日の午後、打合せ途中に見かけた喫茶店へ。まだ慣れない夏日に火照った身体は、考えるよりも先にメロンフロート(450円)を注文していた。鮮やかなグリーンと真っ白なアイスクリーム。店内の雰囲気とは不釣り合いな、人工的な色味にそそられる。まずはソーダを一口、乾いた喉を潤した。ママに会いにきているんだという常連さんの楽しそうな会話を聞きながら、まんまるく整えられたアイスを食べる。氷に触れているシャーベット状の部分が、なんだか懐かしい。ソーダがなくなるほど、鮮やかだったグラスは色を失い、店内の景色と同化していく。染みわたる甘みと爽快感が身体を満たし、自然と頬がゆるむ。(文/武山 勝哉)