昭和喫茶探訪
カレーに重ねる人生模様
複雑に混ざり合った色いろ
喫茶 解放区
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思ったように伝わらないというのは、人と人との付き合いの中ではよくあること。表情や語彙力、声色も決して豊かとはいえない自分の場合、心の底から思って発した言葉でさえも、相手の心に届かないことがある。多分、軽いのだ。
今日は夏の暑さで失った体重でも取り戻しにいくか。と、重量級のチキンカツカレーを求めて入店。メニューをぱらぱらとめくるふりをしながら、迷わず注文。厨房をちらちらと横目に見ながら、その時を待つ。スパイスのいい香りがしてきた頃、ママが大きなお皿を抱えてやってきた。真っ黒なルーと、ドーナツ状に盛られたご飯、その中でひしめき合うチキンカツ。これは見るからにハイカロリー。きっと完食する頃には、言葉の重みも増していることだろう。見た目のインパクトもさることながら、「コク」という表現以外が見当たらないほどの味わいに驚く。深い。どこまでも深い。これはもう、重みだけでなく深みまで増してしまうのではなかろうか。どこから崩すか、ルーもいいが、やっぱりカツにはソースもいいな。なんてやりとりが、頭の中で繰り広げられる。カレーのペース配分には自信があるのだが、そんな僕でもご飯とカツを食べきったあとに、ルーが少し残った。これは間違いなく、足りなくならないようにというお店の心意気。きれいに平らげ、その気持ちを勝手に受けとった。
解放区という一見メッセージ性が強い店名には、誰でも気兼ねなく来てほしいとの願いが込められているそう。どう受け取るかで、意味が変わってしまうのが厄介でもあり、おもしろがりたいところでもある。満腹状態のやや苦しそうな顔で、ママにおいしかったですと伝える。その言葉が、真っすぐ届いているといいなと思っている。(文/武山 勝哉)
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インパクトあるデカ盛りメニューが人気の喫茶店
住所:旭川市豊岡9条5丁目3番17号TEL:0166-34-4855/定休日:日曜、祝日/駐車場:あり
豊岡/カフェ・喫茶
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