昭和喫茶探訪
味の旅はガンダーラを超えて
一皿に乗せた熱に惹かれる
自家焙煎珈琲専門店B.BROWN ビーブラウン
今年もついに雪が降った。身体が冷えてしまうと、なにもかもが億劫になる。この先を考えると、無理にでも気分を上げておきたいところ。仕事もひと段落ついたし、今日は身体を芯から温めよう。家に帰って風呂に入る前に、予熱しておくか。
ドアを開けると、整然と並ぶ珈琲豆が出迎えてくれる。家で淹れるためのドリッパーなどもあり、こもりがちな冬を楽しくしてくれそうだ。そんな自家焙煎豆が自慢の喫茶店は、いつしかカレーでお馴染みの店となった。今はコーヒーだけの提供はせず、食事が必須となっている。辛いものは少し苦手だが、今日はあえて辛めのB.BROWNカレー(950円)に決めた。食後のコーヒーも一緒に。
夕方の5時前だというのに、窓の外はすっかり暗い。店内には、厨房の音とデイドリームビリーバーが流れる。心地よい気分で待っていると、カウンター越しに漂うスパイシーな香りが鼻を抜けた。見るからにジューシーなソーセージとフライドポテト。ご飯の上のベーコンもすべて標準装備というから、お得感を感じずにはいられない。ルウと米が触れあっている部分から、まずは一口。ポークの旨み、辛さも甘さも織り交ぜた複雑な味が広がる。手が止まらないとはこのことだが、カレーは決して飲み物ではない。じっくりと向き合い、味わうべき料理だろう。見た目はどれも似ているかもしれない。だが、その道程が同じものはひとつとして存在しない。そんなところにロマンを感じた。
ひとつのことを磨き続けた結果の、どこにもない輝き。大した取り柄のない僕も、いつかそんなひとつに出合いたいと思う今日この頃。冷え切った車内が、スパイスの余熱で少し曇る。先のことは見えやしないが、身体だけは温かかった。(文/武山 勝哉)
関連スポット
住所:旭川市神楽3条4丁目4-11TEL:0166-62-5520/定休日:水曜・木曜/駐車場:店舗前にあり
神楽/カフェ・喫茶, 洋食・レストラン
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