- ©2022 Ex4 Productions, Inc.
マッチョなアクション俳優をどっさり詰め込んでド派手な映画を作る、というコンセプトで我らがスタローンが始めた冗談みたいなシリーズだが、テンポ良く三作が公開されたあと、四作目の話だけ聞こえてきたまま9年が過ぎた。様々な大人の事情に加え、コロナの騒ぎなどもあって遅れに遅れ、当初の予定とはおそらくだいぶ違うものになってしまったであろう本作だが、こうして公開されたことは素直に嬉しい。
前作はハリソン・フォードやメル・ギブソンまで登場し、さながらマッチョ俳優図鑑といった様相の豪華な作品であったが、本作は噂のあった著名な俳優が軒並み登場せず、シリーズとして並べてもだいぶおとなしいものになっている。ちゃんと面白いアクション映画になっているのだが、エクスペンダブルズとして見たかったものはこういうのじゃない、という複雑な感覚がある。
本作はいろんな意味でジェイソン・ステイサムの映画になっていて、シリーズの中でスタローンからステイサムへとバトンが渡された印象もある。なお本作は前作での失敗を反省したということで暴力シーンの残酷描写満載で堂々のR15指定なので鑑賞時はその点にご注意いただきたい。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
エクスペンダブルズは2010年からスタートしたシリーズで、80年代にアクションスターとして一世を風靡したシルベスター・スタローンが、数々のアクションスターを集めてド派手な映画を作る、という趣旨で2014年までに三作が公開されていた。4年間で三本というハイペースで制作され、さらに回を重ねるごとに出演俳優が豪華になるというスーパーシリーズであった。2014年の三作目公開直後から四作目の噂はあり、ニコラス・ケイジやスティーヴン・セガール、ピアース・ブロスナン、ハルク・ホーガンなどの出演がささやかれていたのだが、その後の紆余曲折で彼らの出演は無かった。また、これまでのシリーズに出演してきた俳優陣もかなり削減されており、スタローンとジェイソン・ステイサムを中心に、ドルフ・ラングレンとランディ・クートゥアが残っているぐらいであとは若手に入れ替えられている。
全体的な印象として本作はいわゆる「エクスペンダブルズ感」とでも言うべき、「細かいことはいいからすごい俳優で派手にやる」というムチャクチャ感が薄れていて、エクスペンダブルズに期待しているのはこういうものではないという印象を受ける。まず、序盤のシーンでいきなりスタローンが演じる本作の主人公、バーニー・ロスが死んでしまう。タイトルの「ニューブラッド」は邦題で勝手に付け加えられた要素ではあるのだが、スタローンが去り、ステイサムが主役として動く本作は、シリーズにとってのニューブラッド、世代交代に他ならないのだろう。ただ、最近とにかくいろんな映画で見かけるジェイソン・ステイサムが主役的な位置になることで、「見慣れたアクション映画」という印象に落ち着いてしまった印象は拭えない。
終盤のシーンで、バーニーは実は死んでいなかったという展開で再登場するのだが、スタローンは本作にバーニー・ロスというキャラクタでかかわるのはこれが最後という意思表示をしているようなので、今後このシリーズが続いていくとしたら、当初のような「著名な俳優を満載して派手にやる」という方向ではなく、ジェイソン・ステイサムのアクション映画として普通のアクション映画に落ち着いていくのかもしれない。シリーズが続いていくためにはこういう世代交代は必要なのだろうが、それであればエクスペンダブルズとして続ける必要はないのではないかとも思う。いろんな意味でエクスペンダブルズの終わりを感じる作品だ。