- ©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会
明治の北海道を舞台にした漫画作品『ゴールデンカムイ』。アイヌ文化に触れながら壮大なアクションを描くこの作品は、すでに原作漫画、アニメ化作品ともに大好評でご覧になった方も少なくなかろう。本作はその実写版として登場した作品で、内容を見る限り、今後続いていくシリーズの一作目になるであろう作品と言える。
日露戦争終戦後の明治期を舞台に、史実とフィクションを織り交ぜて展開するある種の仮想歴史ものといった風合いの作品だが、主人公がアイヌの末裔と行動を共にするため、アイヌの言葉や文化の紹介になっている側面もある。
漫画原作なので漫画的特徴を持ったキャラクタが数多く登場するわけだが、いずれもキャスティングがこれ以上ないほど見事でものすごい再現度を誇っている。漫画原作で先にアニメも作られているという本作のようなケースで実写版が成功するには、アニメの印象を損なわないキャスティングというのがとても重要である。本作はそこが飛びぬけていて、特に鶴見中尉を演じる玉木宏の鬼気迫る演技は驚異的だ。
原作が好きな人にもこれまで見たことがない人にもお勧めしたい実写版。少々早すぎるがもう次回作が待ち遠しい。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
原作の壮大な物語をどうやって映画化するのかと疑問に思っていたが、当然のように連作を前提とした作りになっていた。本作は二時間ちょっとという上映時間で、物語のごく最初の方だけを描いている。主要な登場人物の関係性が見え、さぁこれから面白くなってくるぞ、というあたりで終幕となる。エンドロールと並行して挟まる映像にはまだ見ぬシーン、まだ見ぬ人物が登場し、すでに次回作も動き始めていることを感じさせる。
もともと連載長編漫画が原作であるため、最初から物語の建てつけが大規模である。シンプルに言えば「どこにあるかわからない埋蔵金を追う」という話ではあるのだが、その手掛かりが24人の体に刻まれた刺青に書かれている、という点が面白い。24人というのはけっこうな数であり、これを集めていくというのが物語の主軸にある。金塊を欲しているのはもちろん主人公たちだけではなく、様々な勢力がこれを奪うべく動いている。手がかりとなる暗号は生きた人間に刺青として刻まれており、刺青を持つ本人も金塊を探す側にいたりする。この壮大な話がいったい二時間の映画何本で完結するのか、現段階では想像を超えている。ぜひとも結末を描くまでシリーズを継続してほしいところだが、果たして何年かかるのだろうか。無事に金塊にたどり着けるのか。その答えは謎解きではなく、作品の人気をいつまで維持できるか、あるいは俳優たちが年を取りすぎる前に描き切ることができるかといった要素にかかっていると言えそうだ。