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仲が良かった幼なじみと小学生の頃に遠く離れてしまい、24年を経て再会するというお話。実際に対面するまで24年だが、12年目にオンラインで再会する。今、インターネットが人々の生活に浸透し、遠く離れた人と距離を感じずにコミュニケーションをとることはできる。でもやはり実際に面と向かって会うのとはきっとなにかが違う。そのなにかのために、二人の行く末が左右されていくというようなストーリーである。
予告や作品サイトには「完璧なラブストーリー」といった文言が並んでいるが、ここに描かれている「ラブ」はいわゆるラブストーリー的なものとは少々異なる。情熱的な恋愛がどうこうなるような話ではなく、もっとずっと淡く、そしてその分、リアルである。愛とはなにか。幸せとはなにか。きわめて身近でありながら答えがはっきりしないそんな問いを追いかけ、悩み、通り抜けた経験を持つ大人向けの作品と言えるような気がする。
愛とは愛する人と一緒にいたいと思うことだろうか。それとも、愛する人に幸せでいてほしいと思うことだろうか。この映画の主要な登場人物のうち、最も愛が深いのは誰だろう。あなたの目にはどう映りますか?(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
小学生の頃に淡く意識しあっていた男女。韓国で暮らしていた少女はカナダへ移住することになり、二人は離れ離れになる。それから12年後、彼女はさらに米国へ移住して暮らしているのだが、オンラインでこの幼なじみの男性と再会する。このときはオンラインであり、お互いに特定のパートナーもおらず、良い感じの再会を果たす。しかし。タイミングが良くなかった。二人ともそれぞれの将来のために頑張っているところで、雑に言えば恋愛よりも優先すべきものがあった。年をとって振り返ってみると、こういうことはあるなぁと思う。もしかしたら運命の人だったかもしれない相手と出会っているのに、タイミングが良くなかったせいで結ばれない。あのときもっと違う選択をしていたら、その後が違ったかもしれない。そんな思い出を持っている人は少なくないだろう。でもそこは人生。過ぎてしまったことをいくら振り返っても、それは「たられば」の話にしかならない。選んだ道がすべてであり、選ばなかった道はもう存在しない。
本作が描いている愛はとてもリアルであり、登場人物もとてもリアルである。ともすると絵空事になってしまいがちな恋愛映画というジャンルにおいて、この作品はまったく嘘くさい要素がない。その分、恋愛映画に期待されるような夢みたいな甘さや、やりきれない苦さのようなものもない。あまりにリアルであるため、かえって映画としての起伏には乏しい。このせいで、見る人によっては「大して面白くない」と感じるかもしれない。この映画には心躍るようなエピソードは無いし、登場人物になにか大きな変化があったりもしない。女性一人と彼女に関係する二人の男性が登場する言わば三角関係のストーリーだが、男性はどちらもあまりはっきりしない人物で、積極的に魅力的な人ではない。二人とも優しい人だが、その優しさの裏に弱さが潜んでいて、重要な局面ではっきりしないような人である。この辺が恋愛映画としての盛り上がりに欠け、同時にとても現実味のある、身近な物語として響く大きな要因になっている気がする。
主人公の夫アーサーは強い人物ではないがゆえに優しさに溢れており、きっとこの人を夫にしたことは彼女にとって結果論的には良かったのだろうと思える。おそらく多くの現実の恋愛において、このような傾向はあるのだろう。そういう意味でも、この作品は全く映画的でないほどにリアルなのだ。