- ©金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会
サッカーを題材にしたアニメ作品だがいわゆるスポ根みたいな話ではなく、「ハンター・ハンター」のサッカー版のような物語である。世界観がだいぶぶっ飛んでいてリアリティは無いのだが、登場するキャラクタが皆魅力的でドラマとしてとても面白い。
何に対しても無気力だがとてつもない才能を秘めている主人公を、アニメにしか出てこないような御曹司のクラスメートが半ば強引にサッカーに誘う。二人は瞬く間に注目を集め、世界一のストライカーを育てる強化合宿に招聘される。この強化訓練がほとんどハンター試験のようなもので、作品はなに一つ現実味のない世界に突入していく。ここで出会う超人的なライバルたちとのやりとりと、それを通じて自らの内に眠っていた情熱みたいなものに気づき始める主人公の物語はとても魅力的で惹き込まれる。世界設定が非常識なことはあまり気にならないのだが、わずか105分という上映時間に比して内容が盛り盛りなので、特に中盤以降の展開が早すぎてもったいないと感じる。
なにも予備知識がないまま見たのだが彼らから目が離せなくなり、完全に作品のファンになってしまった。これは新時代の青春映画なのかもしれない。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
物語のスケールに比して上映時間が短い。いや、短すぎると言っていいだろう。おそらく劇場版一作でここまでやる、具体的には、U-20 日本代表との試合開始直前までを描く、という企画だったのだろうと思うが、そのボリュームに対して105分はあまりにも短い。この作品はキャラクターの前知識が全くない状態からスタートするため、やはり序盤は丁寧に描かれている。主人公と主人公をサッカーに巻き込んでいく親友(となる人物)のエピソードで前半の大部分を使う。この辺にはほとんど不満はない。多少展開が早すぎる感はあるのだが、でも描くべき人物は描かれているように思う。ところが中盤から様子がおかしくなる。ハンター試験みたいなブルーロックでの試練がスタートし、その最初のステージは比較的ちゃんと描かれる。主に同じチームに居合わせた中で今後も長く登場しそうな人物を掘り下げて描いている。駆け足感はあるものの足りない気はしない。だが、2nd ステージになったとたんに展開が急ピッチになる。どう見てもかなり重要と思われる、現時点でランキングナンバーワンの人物が出てくるが、この人物がほとんど描かれない。とんでもないやつがいた、という扱いでさっさと終わるのだが、どう考えてもこの人はU-20代表との試合で中核になるはずであり、そのエピソードの前にちゃんと描いておくべき人だろうと思う。しかし本作105分では描き切れないため、言ってしまえばかなり雑な扱いになっている。この2nd ステージ以降の急展開は少々やりすぎであり、いろいろな事情があることは想像できるものの、それでももっとしっかり描いてほしい部分ではあった。前後編に分けて描くべきだったのではないかとも思う。
この作品の率直な感想は「とても面白かった」というものだ。登場人物に魅力を感じるし、彼らのこれからを見たい。物語は実に魅力的なのである。それだけに後半の急展開が残念でならない。願わくば、端折られた部分に登場したランキング一位のキャラクタを主人公にしたスピンオフ作品などで、本作で描かれなかった部分を描いてほしい。不満みたいなことを書いているが、とどのつまり「もっと彼らを見たい」のである。もちろんそれはこの映画がとても面白かったからに他ならない。