- ©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会
8年前、『さらばあぶない刑事』で「サラバだぜ」と言っていたはずの「あぶ刑事」シリーズ、まさかの新作が登場。今回は特にこれで最後だぜという宣言はされていないのだが、主要キャストの年齢を考えるとこの次を作るのはおそらく物理的に難しいため、本作が本当のラストになる可能性は高そうだ。そんな思いを抱えて見た本作、大満足の仕上がりであった。主要なキャラクターはもちろん、事件そのものも過去のエピソードとリンクした内容になっているし、往年のファンが見たがる「あぶ刑事」がぎっしり詰まっている。そこまでしなくてもいいだろうという部分まで含め、完璧な「あぶ刑事」だ。
私は今回、シリーズを一つも見たことが無く、キャラクターを含め何も知らない息子と見に行ったのだが、こういうド派手系刑事ものみたいな作品自体が珍しいため、新鮮に楽しんでいた。随所にちりばめられたコメディ要素でしっかり笑い、今どきあり得ないようなドンパチアクションも大いに楽しめたようなので、過去作をまったく知らない人にもお勧めしたい。
タカ&ユージがいずれも70代であることを思うと、年をとったからといって枯れてる場合ではない、と思わされる。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
「西部警察」あたりからの流れで、昭和の終盤、日本のテレビドラマ界には「刑事もの」という一大ジャンルがあった。1990年代に入ってトレンディ・ドラマという流れが登場して終焉を迎えた印象がある。「あぶない刑事」シリーズはそんな刑事もの全盛期に登場したシリーズの中でも、コメディ要素で他とは一線を画していたように思う。「あぶない刑事」シリーズがテレビ放送されていたころ私は小学生だったのでそれほどしっかりと批評できるわけではないのだけれど、小学生の感覚で見ていても、アクションとコメディのバランスが絶妙で他シリーズよりも強い印象を受けた。本作を見たあと、過去作のリストなどを振り返って確認してみたのだけれど、実に私はこれまでのすべての劇場版を見ていた。そんなにシリーズを追いかけてきたというつもりは無かったのだけれど、おそらくテレビで放映されれば見るし、1990年代以降は上映されれば映画館に足を運ぶ、といった感じで見てきたのだろう。この作品にはそんな、超大好きで絶対見ます、みたいな迫力で追いかけていなくても、なんとなく新作やるんなら見たいな、という感じで惹かれる要素がある。どんな内容であれきっと楽しいだろう、という予感があるのだ。
本作ももちろん、その期待を裏切らない。僕らの見たい「あぶ刑事」がしっかり展開される。コメディが底抜けに楽しく、主人公たちは超人的でありながら人間的。主人公たちの周囲にいる人物も皆魅力的で、特に今回、町田課長(トオル)が最高に良い。昔のアブ刑事の頃から感じているのだけれど、派手な主人公たち二人の後輩として、二人に憧れながらも実直なトオルというキャラクタを配置しているのはこの作品の本当に見事な点の一つだと思う。彼の存在が「あぶ刑事」をスーパーヒーロー映画にせず、観客の近くに引き留めているように思う。演じている仲村トオル、もっといろいろな映画で見たい。
本作は過去作を知らなく手も楽しめる映画ではあるけれど、当然ながらノスタルジーとしての要素は強い。少々やりすぎなぐらいで、特に過去シリーズで使われていた車(日産のレパード)を持ち出してくるなどはほとんど物語上の意味がなく、必要かと言われれば必要ではない。それでもやはりあの車をトオルが運転して運んでくるシーンは熱いものがこみ上げてくるわけで、私もそのノスタルジーを喜ぶ側の一人になっただということだろう。