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マルチバースという多層世界が持ち込まれてなんでもありになってしまったマーヴェル映画。初期は楽しんでいた人もちょっと食傷気味になってきているのではないだろうか。そんな膠着した状況をぶっ壊してこじ開けるならこの人、デッドプール。メタフィクション自虐ネタ満載でシリーズのあれこれをぶっ壊す。ディズニーにフォックスが買われたという事情に絡めてディズニーをおちょくり、キャラクターとそれを演じている俳優もごっちゃにして時々俳優の名前で呼んじゃったり、同じ俳優が演じているキャラクターを混同したり、全編悪ふざけみたいな小ネタが満載である。さらに、バトルシーンは必要以上に残虐で言葉はひたすら下品。これによって堂々のR15指定となっている。
デッドプールの過去作よりもむしろ、X-メンを見たことがないとわからない部分があるかもしれない。過去のさまざまな作品の要素が、ほぼ何の説明もなく知っている前提で進む。とはいえアホみたいなことをしゃべりながら派手にアクションするのがこの作品の魅力なので、何一つわからなくてもたいして問題は無さそうだ。万人向けではないものの、バカバカしさを楽しめる人にはお勧めの映画である。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
この映画をただ楽しむだけならマーヴェルの過去作を知らなくても大して問題ないが、やはり多くの過去作を見ている人に向けて作られた作品なのは間違いない。アヴェンジャーズシリーズよりもX-メンシリーズの方に重点が置かれており、ファンタスティック・フォーやアントマンのネタなども入れてくるので、幅広くマーヴェル作品全般を見てきた人向けと言える。
マーヴェルは複数の作品世界を繋ぎ、MCU(マーヴェル・シネマティック・ユニバース)を始め、近年、ドクター・ストレンジが出てきた辺りからはマルチバースと言って、同じ人物がまったく別の世界で暮らしているという並行世界の世界観を持ち込んだ。これにより近年もはやわけのわからない状態になっており、マルチバースだと言えば何でもありみたいなことになっている。本作はそれに対して「そもそもマルチバースって無理があるし、あちこち破綻してるよね」と思っていた人の気持ちを代弁している点も痛快だ。
本作に登場するウルヴァリンはこれまでのシリーズのウルヴァリンとは別の世界から連れてこられたという設定で、これまでのウルヴァリンが見せていなかったもの、あの、コミックに登場するコスチュームで登場する。これだけでもファンにとっては貴重な作品になっている。最初にX-メンが実写映画化されたとき、ウルヴァリンがもっともコミックとかけ離れた姿をしていて、「違うじゃん」と思った人は多かったであろう。かく言う私もその一人であった。その後シリーズを重ねることでヒュー・ジャックマン=ウルヴァリンのイメージが固まり、近年もはやコミックと姿が違うことをどうこういう人はほとんど見られなかったのだが、やはりこうしてヒュー・ジャックマンがそのままあのコスチュームに身を包んで出てくればそれはもう感涙ものなのである。
ストーリーは相変わらずとってつけたようなもので、X-メンのチャールズにきょうだいがいたとかいう後付け設定でムチャクチャな展開になるわけだが、なかなかどうして、見終えての気分は良い。