- ©2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
ティム・バートン監督によるホラー・コメディということで、伝家の宝刀的な作品と言える。実は35年前の一作目の35年後を描いた続編でもあり、主要キャストがそのまま続投しているので、前作と並べて見ると35年の経過を感じられて感慨深い。ただストーリーとしては前作を知らないまま見てもまったく問題ないので安心してご覧いただきたい。
さすがのバートン節と言うべきか、先の展開がまったく読めない。あらゆるシーンで想像を超えてくるので驚きの連続だ。悪ふざけみたいな演出も満載だし、いずれ劣らぬ名優たちが全力でその悪ふざけに加担している。特にウィレム・デフォーはさながら本作のMVPであろう。
ティム・バートン監督は大衆受け万人向けのエンターテイメントを毛嫌いしている傾向があり、本作でも随所に、安っぽい共感や感動みたいなものをやり玉に上げて蹂躙していく表現が見られる。幸せっぽいモチーフは端から台無しになり、感動しそうになると「そうはさせない」と言わんばかりの展開が続く。共感の押し売りみたいなエンターテイメントに飽き飽きしている人にこそ見てほしい作品だが、ハマると中毒性が高いので注意は必要かも。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
前作から35年。みんな35年分年をとっている。のに、印象はあまり変わらないので驚かされる。特にウィノナ・ライダーは前作で16歳、本作では51歳なのだが、メイクの特殊性も相まってかそれほどの年齢差は感じられない。
内容はいわゆるバートン節で、得意のホラー要素を取り入れたコメディというスタイルが健在だ。全く先の読めない展開で、「ふつうこうなりそう」という予想は一つも通用しない。要するに、「ふつう」な要素がまったくない。そして、いわゆるディズニー的な大衆向けエンタメに対する嫌悪も健在で、相変わらずそういうものを踏みつぶしていくような演出も満載だ。こういう所が、私のようなファンには痛快である。今回は直接「ディズニー」というワードが登場する台詞もあり、本当に嫌いなんだなと改めて感じた。
本作では男女間の「愛」もやり玉に上げられている。祖母、母、娘という三人の女性が登場し、祖母と母の夫はどちらも既に死亡。母は仕事の関係の男性から言い寄られており、作中で結婚式も描かれる。娘は本作中で知り合うイケメンといい感じの仲になる。のだが、どの関係もおよそ想像できないような展開でぶち壊しになる。恋愛感情のもたらす盲目性を暴き出し、かたっぱしから焼き払っていく。世に次から次に出てくる嘘くさい恋愛映画に辟易している人にはとても痛快だろう。一方で母娘感の愛情みたいなものについては比較的好意的に描かれているが、そこに重さはなく、あくまでサラリと描いている。また、本作は死後の世界と人間界を横断的に描いていることもあり、「死」の描き方もとても軽い。
表現はかなり尖っているし、独特の世界観でもあるので万人向けではないかもしれないが、このようなマスに対するアンチテーゼを思い切り表現した作品がメジャーシーンの真ん中に出てくることは、ティム・バートンの巨大な功績の一つだと思う。ぜひ多くの人に見てもらいたい。