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韓国からやってきたホラー・サスペンス。予告編を見たときの印象はそんな感じだったのだけれど、見てみたらそんなありきたりなカテゴライズでは語れない、想像を軽く超えてくるとんでもない話だった。
風水的な観点から場所を選んで埋葬するために、地官と呼ばれる風水師のような職業が登場する。さらに、遺族になにか異変が起きると、一度埋葬した先祖を掘り返し、改めて清めたり、別の場所へ移して埋葬したり、あるいは火葬しなおしたりという「改葬」という行為も行われる。
そういう少々なじみの薄い宗教観の中で、ある富豪のいわくつきの墓を改葬することになって…、というのが本作のお話なのだが、これが思ってもみない方向に展開する。
作品としてはエンターテイメントではあるものの、扱っている題材から日韓の歴史について考えさせられる部分もある。墓の底から出てきた意外なものの正体とその描かれ方に、両国を隔てる歴史の重さを感じずにいられない。
見ごたえのある面白い作品ではあるが、超常怪異ホラー的な内容なので誰にでもお勧めできるというわけでもない。日本のホラーとも西洋のホラーとも違う韓流ホラーを体感してほしい。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
描かれている宗教観がとても新鮮だった。序盤、まず主人公たちのやっている仕事がどういうものなのかを説明するため、本筋とは別の、一件の「改葬」を取り上げる。この部分で死との向き合い方、埋葬の考え方等が語られるのだが、その少々なじみのない感覚が興味深い。
続いて本題の話が持ち込まれるわけだが、こちらはもう墓を下見に行った段階から不穏すぎる感じである。大富豪の墓なのになぜか風水的に最悪の場所にあり、ごく質素な(ともすると粗末な)墓である。こんなところに埋葬されているせいで霊は癒されることがなく、子孫に良くないことが起きている。
そもそもなぜこんなところに埋葬されねばならなかったのか。一応それを追うような話ではあるのだが、結果判明した理由と、さらにその棺の下に埋まっていたものが判明してからは全く別の話になる。
結局のところこの大富豪はいわゆる朝鮮貴族で、日韓併合を後押ししたことで日本から貴族として認められた人であった。一緒に埋められていたのは日本が朝鮮半島の要となる地に打ち込んだ杭としての「鬼」。
得体のしれない恐怖の象徴として日本の侍の姿をした「鬼」が登場し、問題の墓が悪しき力に満たされていたのも、地脈を汚すようなこの鬼が埋められていたためであるという描き方がされている。朝鮮半島という土地から力を奪った元凶が日本だとも読める描き方なのだ。たしかに日韓併合の後第二次世界大戦があり、日本がこの大戦に敗北したことがその後の南北朝鮮の分断にもつながった。日韓併合については単なる侵略ではなく、このとき日本によって持ち込まれた教育などはその後の韓国の発展を大きく支えたという見方もある。とはいえ、韓国に根強くある「日本観」というのがこの作品には色濃く表れており、我々は日本人として、ひとまずこの事実を認識しておく必要はあるのだろう。