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もともとは海の民をつなぐ特別な島があったが、人々が力を持つことを恐れた神の呪いによってこの島が海に沈められ、人々は分断されてしまった、というバベルの塔の海版のような話である。主人公モアナはその呪いを解くためのキーパーソンとして未知の世界へと旅立つ。人間の仲間と、前作にも登場した半人半神みたいなマウイを伴って冒険するわけだが、人間の仲間もそれぞれに魅力があるのにマウイが目立ちすぎていてかすんでしまっている。
遠い地で暮らすまだ見ぬ人々と出会うことが大きな力となる。それがこの物語の核にある。海の向こうから現れる未知の人たちは仲間であり、彼らと手を取り合うことは未来への希望だ。だからこそ、モアナたちは命がけで呪いを解きに出かける。でも僕らの地球において、航海技術の向上は戦いを生み、侵略と強奪の歴史となった。本来、他者と手を取り合うことは大きな力につながる。だからこそ、神々は人々を分断する必要があったのだが、現実には人は人同士で勝手に争い合い、力を奪い合って消耗していく。この映画から学ぶことは多い。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
モアナの二作目だが、この作品は以降への布石のようになっていて、本作の話はいったん決着するものの、悪役は大したダメージもなく健在でラストにも登場する。この先に彼らとの戦いが続いていくという予感を見せて終わるため、今後も続編が作られていく可能性は高そうだ。が、そうなると次第に「戦う」という要素が強くなっていくのではないだろうか。モアナはもともと戦う人ではなく、海と共生しながら暮らす純朴な少女である。彼女の魅力は清くまっすぐな心で、前作ではその澄んだ強さでマウイを救った。本作においても未来を疑わず、まだ見ぬ人々との出会いのために前進する。モアナは本作で先祖たちとつながって新たな力を得るのだが、今回登場した強大な敵と今後戦っていく、という話になると彼女は戦士になってしまうだろう。それは果たして彼女にとって、ひいては本作にとっても、本当に良いことなのだろうか。売れたら続編を作るというのはビジネスとしては理解できるけれども、無理やり続編を続けていくとどうしてもバトル漫画的力のインフレになっていかざるを得ない。映画は続編になればなるほど予算が増え、映像として派手な要素が増える。ど派手になればなるほど魅力が増すタイプの映画もあるが、モアナはそうではないだろう。作品がヒットし、彼女の物語が広く愛されることは素晴らしいのだが、その結果モアナが戦う人になってしまうのはあまり歓迎したくない。