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ジェイソン・ステイサム主演作品。ただこの一言だけで「なるほど、そういう映画ね」とわかってしまうのがステイサムのとんでもないところ。本作は高齢者をターゲットにしたオンライン詐欺犯罪を描いていて、犯罪者は卑怯かつ非道、事件は極めて不快だ。どこまでも憎い犯罪者を何人も描き、それを我らがステイサムが片っ端から成敗する。主演ステイサムの作品においてしばしば主人公は無敵である。あまりにも強すぎて、もはやスーパーマンもアベンジャーズも必要ないんじゃないかと思うほどだ。
この主人公には事件を解決するという意図はない。何もかもすっ飛ばしていきなり制裁を加える。彼に慈悲のようなものは一切なく、淡々と行く手を阻むものを排除していく。主人公が養蜂家(ビーキーパー)であることでミツバチに関する挿話が入るのだが、これがなかなか興味深く、一応なんとなく作品の色になって他作品との差別化にはなっている。
奇しくも昨年の一番最初に紹介した『エクスペンダブルズ ニューブラッド』もステイサム映画であった。今年もぜひ、この圧倒的に強いジェイソン・ステイサムを堪能して気分を新たに新年をスタートさせてほしい。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
ネタバレという意味では「ジェイソン・ステイサム主演」の時点でだいたいどういう映画かわかってしまうので主演俳優がもうネタバレである。一時期のシュワルツェネッガーもそうだったが、ジェイソン・ステイサムが主演する映画にネタバレという概念は存在しない。圧倒的な主人公が極悪な悪人どもを片っ端からぶちのめす映画。結末までほとんど何もかも予想通りの展開になるような作品ではあるのだが、各所に名言が散りばめられていたのでここではそれを紹介したい。ちなみに私はこの作品を吹き替え版で見た。やはりジェイソン・ステイサムの声は山路和弘の声で馴染みすぎていて、毎度吹き替え版を選んでしまう。今回印象に残ったセリフを、吹き替え版のものをベースに紹介してみる。
まず、元CIA長官のウォレスが、ビーキーパー対策としてスペシャルチームを招集した際に放つ言葉。「君らは元シールズであり、デルタフォース、つまりは、雑魚だ」。特殊部隊の精鋭チームにいた経験を持つ歴戦の戦士たちに対し、ビーキーパー(ステイサム)の前では雑魚だ、と一蹴する。我らが主人公の異次元ぶりが伺えるシーンだ。ウォレスだけは最初からビーキーパーの存在を知っており、その名が登場した時点からずっと彼を恐れていた。
主人公のセリフで印象的だったのは、ドンパチシーンでひと騒ぎした後、FBIの捜査官に「法律を無視するな」と言われてそれに返す言葉だ。「法律が役に立たないときが俺の出番だ」。この「法律が役に立たない」という不満はおそらく多くの国で、被害者側に鬱積しているのだろう。アメリカも例外ではなく、アメリカにおいて「法で裁けないものに暴力で制裁を加える独立愚連隊」はよく映画になる。特攻野郎Aチームもそうだし、ワイルドスピードも見方によるとそうだ。今回のビーキーパーも、国家が用意した「システム外からシステムを見張る者」という位置づけになっている。どんな組織においてもその外側からバランスを監視する仕組みは不可欠であり、それを持たない組織は早晩自滅する。『ビーキーパー』はシンプルなステイサム映画なのだが、この「システム外から監視する」という概念を養蜂家として描いている点に大きな魅力がある。