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言わずと知れたおなじみのタイトルだが、かつてのスティーブ・ロジャースではない、新しいキャプテンである。一旦第一世代とも言うべき時代が終わったアベンジャーズシリーズだが、その次の世代がどうしても第一世代に対して見劣りする状況が続いている。本作はキャプテン・アメリカの名を冠して登場したので期待が高まるわけだが、映画としては十分に面白いものの、全体的に「すでに終わったもの」感が出ているマーベル・ヒーローシリーズ、起死回生の一打と言えるほどの力は残念ながら感じられなかった。旧アベンジャーズのヒーローたちにあった「華」のようなものが足りないように感じる。既に多すぎる過去作を見ていないとわからない要素がある点も、新規ファンを取り込む上では障害になろう。
内容的には、日米関係の描き方が特徴的で違和感を覚える。合衆国大統領の振る舞い、アベンジャーズ的なものの立ち位置、作中でのアメリカの立場。そういった様々な要素がだいぶ変化している。それだけ現実のアメリカが変わったという受け取り方もでき、現実世界における日米関係や米国の情勢と照らしながら見るとただのエンタメ映画ではない見え方になりそうだ。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
旧キャプテン・アメリカシリーズやハルクなどの作品の要素を受け継いだ物語になっている。またこれまでのアベンジャーズシリーズの物語に関連した話も登場する。MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の作品の必然とも言えるのだが、既にユニバースが巨大になりすぎていて、知っておくべき過去作が多すぎる点が気になる。当たり前のように、これまでの物語を知っていることが前提になっている。しかしMCUの初期の作品は既に20年近くも前であり、「当然全部見てるでしょ」という前提で話を進めることには少々疑問がある。
本作はかつてファルコンだったサム・ウィルソンが新たなキャプテン・アメリカとして活躍するという話である。これまでのファルコンがキャプテン・アメリカの盾を装備している、という印象で、本作では新たなファルコンも誕生する。また、作中でアベンジャーズを再始動するという話も描かれ、その中心としてこの新しいキャプテン・アメリカが立ち上がることになる。当然ながら、今後MCUを続けていくのであればアベンジャーズは再結成されねばならず、本作はそのスタートの作品と言えるのだろう。そのような観点で見ると、やはり旧アベンジャーズのような派手さが足りない。過去にシールドのニック・フューリーやアイアンマンが中心となってド派手なヒーローたちをまとめて作り上げたアベンジャーズは既に無く、中心人物の大部分が不在である。この状況から新たなアベンジャーズを生み出すのは至難の業であるが、マーベルスタジオとしてはドル箱のこのシリーズをこのまま終わらせることもできまい。そして本作は「キャプテン・アメリカ」の名を冠して出てきたので肝いりであるはずだ。それがこの程度のインパクトしか持っていないという状況を見るとアベンジャーズは前途多難だと言わざるを得ない。
ユニバースを謳っている手前過去とのつながりを切るわけにも行かず、かといって「全部見てね」と言うには既に作品数が多すぎ、旧来からのファンと新規のファンをどうやって両方とも満足させるのか、また旧作に比して大幅に減ってしまった「華」をどうやって取り戻すのか、といった巨大な課題が浮き彫りになった気がする。