本来は何を肴に呑もうかという語りが当欄の常だが、今回は酒。どうしても書きたい、そんな場面に出会えて私は嬉しい。

写真はお銚子。これ自体タネも仕掛けもないが、燗のつけ方が面白い。「蒸し燗」という文字通り蒸し器を使いゆっくり時間をかけて蒸し上る燗酒がある、と話には聞いていたが初めて見た。

酒は湯煎でゆるやかに熱を加え、じんわりと温めてやると味わいはまろやかに。対して焼き燗など炎で急激に加熱すると、辛口に変化しやすいとされている。どちらが旨いかは、呑み手の好みによるが、こんな演出をされたら、こっちを呑みたいに決まってる。

で、旨かったのかって?

今般頂いたのは、飲み応えは冷やでやるよりも濃厚で、旨み、酸味が実にふくよか。喉を下れば、きゅ~っと身に染みてくるような味わいだ。これぞ燗のなせる業かと大いに納得した次第。

目の前で、蒸篭のふたを開ければ、温かな空気の中に鎮座する銚子たち。そんなスロウな風情もまた、味があってよろしい。

(フリーライター・唎酒師 コタさん)