
その摩訶不思議な名前を耳にしたのは数年前。テレビ番組が都会の飲食店事情に触れ、レポーターが、ケジャンがブーム、ヤバい美味しさと絶叫していた。
カンジャンケジャンは、生のワタリガニを醤油やコチュジャンなどのタレに漬け込み熟成させた韓国発祥の料理だ。ちなみに醤油を韓国語でカンジャン、ワタリガニがケジャンだそうな。
これは旨そう。一度は食べてみたいものだと思った数年後、その一度目は不意に訪れる。
「カンジャンケジャンあります」。
店の貼紙を見て心が躍った。
とろとろとした身は口に馴染みよく、漬けダレのアクセントが旨味を絶妙に引き立てて美味。同じ生でも自分の知るカニの刺身とは一線を画す旨さだ。美食という表現は照れ臭くて使いたくないが、今回ばかりはそう言うのがかなりしっくりくる。
カニを食べると人は無言になるというが、このカニは別。思わず旨いと店主に向かって叫んだ筆者である。あのレポーターの絶叫はあながち演技ではないだろう。
(フリーライター、きき酒師 コタさん)
