
毎年恒例、名探偵コナンの劇場版。今年はオートバイの運転アシスト機能をテーマにした作品である。
自動車の運転アシスト機能はもはや珍しいものではなくなり、完全な自動運転に向けて次第にその機能が拡大されつつあることは広く一般にも知られている。しかし二輪車の運転アシストはそれと比較して一般への浸透具合が低い。本作はこれに注目し、テレビシリーズに登場していた白バイ隊員の萩原千速をキーキャラクターにして物語を運ぶ。描かれている内容はもちろんフィクションだが、自動運転周辺の技術の可能性として十分あり得るものになっている。
ハイテクを搭載した大型バイクによるアクションシーンはエキサイティングで、特にオートバイの種類による音の違いなどにこだわりが感じられる。悪役の黒いバイク「ルシファー」は、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』に登場したブリクストンのバイクに似ており、音にもその影響が感じられる。
一部、テレビシリーズを知らないとキャラクタの関係性がわからない部分もあるが、大筋に影響は無く、本作で初めてコナンを見る人も十分楽しめる。迫力の音と映像をぜひ映画館で堪能してほしい。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
登場人物の過去に絡んだストーリー展開で、かかわる人物の数もそれなりに多いため、特に中盤までの展開が少々目まぐるしい印象を受けた。少しずつ全容が見えてくる物語構造なのだが、前提になるエピソードが多いため編集にも余裕がなく、「必要だから見せています」という感じで少し入り込みにくい。ただ、前提が整ってからのアクションシーンはじっくり堪能することができ、後半の満足感は高い。
ストーリー展開は相変わらず無茶で、「そうはならんやろ」というツッコミどころは満載である。が、そうでないともはやコナン映画とは言えず、長く見ている人ほど、そのツッコミどころを楽しんでいるような状況もある。
オートバイの自動運転は周辺状況の把握と車体制御に加え、車体のバランスの制御という要素が加わる。低速域でバランスを失うという物理的な特性があり、自動車の自動運転よりもさらに難度が高い。もともとこの周辺の技術はそのまま軍事転用できるもので、関連の技術者はほとんど兵器と同様の意味を持つ。本作は外国企業による技術者の掌握に絡めた犯罪を描いていて、表向きはバイクによるスリリングなチェイスを描いた映画だが、日本の技術者が軍事利用される可能性や、ドローン、ロボティクス分野で世界を圧倒している中国の潜在的軍事力の高さなどを感じさせる作品でもある。
本作は近年のコナン映画の中でも、もっとも社会的テーマに迫った作品と言えるかもしれない。