
超人的なマジシャンたちのチームが、その類稀な技術を駆使して悪を懲らしめるシリーズの三作目である。三作目とはいえ、一作目が2013年、二作目が2016年からの10年越しでの公開のため、もはやこれまでのシリーズを知らない人も多いかもしれない。なにも遠慮はいらない。前二作をまったく知らなくてもこの作品はとにかくエキサイティングで楽しめるだろう。
前作から10年も経っているため、主人公たちメンバーも大幅に若返りが図られ、前作までのお馴染みの面々のほかに、今回から若手が3人加わる。この新旧の連携もよくできていて、強引な世代交代劇ではなく、年長者の経験と若い勢いがうまくバランスし、新たなチームワークを形成している。旧作の顔ぶれも同じキャストで登場し、流れた月日を感じさせない芝居を見せてくれる。
スーパートリックを駆使して悪い連中から資産を盗んでそれを再分配するという、いわゆる善意の盗賊ものだが、トリックそれ自体の鮮やかさもさることながら、その見せ方がとても小気味よく、サクサクと引っ張られているうちに驚きの大団円を迎える。実に後味の良い作品なので、ぜひ劇場でこの痛快さを味わってほしい。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
マジシャン集団が悪者たちから資産を盗む、善意の泥棒もの。アンチヒーローが鮮やかすぎていつの間にかシンプルにヒーローになっていく、という『ワイルドスピード』シリーズなどでもおなじみのパターンである。
冒頭、旧作に登場したフォー・ホースメンの面々がアングライベントを催し、そこに熱狂的なファンが集うというシーンから始まるが、これが実は彼らに憧れる若者たちのチームによる偽装であることが判明する。この導入が見事で、ごく自然な形で若い世代とフォースメンの繋がりを演出している。今回のメイン事件に入っていく過程で過去のメンバーたちが集い、若い世代とあれこれありながら絆が育まれ、お互いに刺激し合いながら技術も磨かれていく。この、年長者と若者の交流の描き方も実に良い。どちらかに肩入れするのではなく、相互に影響し合う形で描かれ、しっかり若者たちに花を持たせる形で幕を下ろす。
一方で、旧作のベテランたちも直ちに引退するほどの年ではなく、一通りの顔ぶれが出そろって、まだ終わらんよ、という形で終幕を迎えているため、続編の有無はさておき、シリーズを継続できるお膳立ては整えたと言える。そもそもこの3作目が前作から10年も空いて出てきているので、少々今さら感が無くもない。しかし今作が実に良くできていたので、過去作を知らなかった層を惹きつける可能性は大いにあるだろう。
『ミッション・インポッシブル』や『ワイルドスピード』といった大型シリーズが軒並み終焉を迎える中、『グランドイリュージョン』はメンバーを入れ替えて継続できる可能性を示唆したようにも見える。ドンパチの派手さではないスリルを見せる本シリーズは、かえって息の長いものになるかもしれない。